第七回 世界史+倫社の私には ~ 瞳の旅と 音の旅 ~

片岡直子

いないようでいてくれる

人類が言葉を持つ以前の状態を「ピュシス」と呼ぶらしい。言葉を持った人類は何が変わったのか? 言葉は人生の感情を全て言い表せるのか? はたまた仮そめの記号なのか?
「H氏賞」受賞詩人が紡ぐ言葉世界を、トカイナカの風に吹かれながら……。

 

世界史+倫社の私には ~ 瞳の旅と 音の旅 ~


和紙の里 篆刻作品のため 細川紙を 買いに来た父
アクティ 一台 駐車場 冬に 巨樹を巡って訪れた 浄蓮寺 杉木立ち
初夏 県道から眺めても  ぼうぼう 奔放に 伸びている  中止になった
今年のポピー 通過して 神川+上里町へ

神流川 勅使河原 見透燈籠に導かれ 大光寺 
鐘楼を見上げていたら 「上里町役場の付近で シカが発見されました
見つけたら 危ないので 近づかないようにしてください」 広報と観光地図
いただきにあがる予定だった 遠い秋 長野電鉄の裏山 幼い子供たちと
カモシカの後姿 夕方の光り溢れ  近づかずに いられるだろうか

人のいない毘沙吐 県の最北はゴルフ場? 烏川 釣りのおじさん
藪から棒  大光寺も  振り返れば 浄蓮寺もまた 武蔵七党 丹党の
丹荘 丹党 丹生神社 耳から入った八高線 世界史+倫社の私 児玉党くらいしか
ボックス型の 丹荘駅  金鑚神社多宝塔 駐車場の猫 卵かけご飯の醤油
ヤマキ醸造 オアシス神泉から阿久原牧跡には 辿り着いたのだけれど

南下の人々 イメージしていたら 丹党は 石田牧 秩父から始まって
母の旧姓の町にも館跡 案外 身近? 高校卒業の春 クラスで泊まった
国民宿舎 両神神社も丹生明神 両神薄 崩落しそうな里宮 クマ 恐る恐る
小学生は カラコロン 鈴鳴らし  日陰 諏訪大明神 二本杉

飯能市 今は無い産院 妹が生まれてくる間 手を引かれ『美しい星』
天覧山  諏訪八幡 丹生樹  中山の智観寺 加治神社 元加治には円照寺
能仁寺の末寺に  父母は 眠って  所沢にも 吉祥院
慌ただしい朝 瞳の端にとらえて 通り過ぎ

国道 二九九号線を 通う度 野田氏 加治氏 中山氏
判乃氏 高麗氏 横瀬氏 阿保氏? 小鹿野氏
呪文のように 唱えてしまう


「夕暮れ越しに」©しっぽ

執筆者プロフィール

片岡直子(かたおか・なおこ)

1961年生まれ、入間市出身。東京都立大学卒業。英国系製薬会社勤務の後、埼玉県と山形県の中学校国語科教諭を経て詩人・エッセイストに。第46回H氏賞受賞。詩集に『晩熟(おくて)』『曖昧母音』(いずれも思潮社)、『産後思春期症候群』『なにしてても』(いずれも書肆山田)他、エッセイ集に『ことしのなつやすみ』(港の人)、『おひさまのかぞえかた』(書肆山田)。朗読CD『かんじゃうからね』。青森県~山口県で詩の出前授業。詩とエッセイの講座を20年、各紙誌書評を16年間担当。2018年にラジオ放送局「FM NACK5」開局30周年「埼玉あなたの“街”自慢コンテスト」の川柳の選考をして以来、県内市町村パンフレットを眺めるのが愉しくなり、ほぼ持っています。



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