いないようでいてくれる

人類が言葉を持つ以前の状態を「ピュシス」と呼ぶらしい。言葉を持った人類は何が変わったのか? 言葉は人生の感情を全て言い表せるのか? はたまた仮そめの記号なのか?
「H氏賞」受賞詩人が紡ぐ言葉世界を、トカイナカの風に吹かれながら……。

第二十二回 海辺に沿って ~ 蓮田から篠山へ ~

片岡直子

 

河跡湖 海跡湖 堰止湖  山ノ神沼 西城沼 黒浜沼  標式遺跡
という言葉  黒浜貝塚は 市役所の向かい  よくこの位置に 庁舎を
見上げてしまう  蓮華院 寅子石 瓦葺の掛渡井 柴山の伏越  偶然立ち寄った
疎開保育園の妙楽寺 映画のポスター 瞳の端に黒い家 集落のはずれ 三つ目は
電柱の陰 伊豆島の大蛇  イルカも発掘された 蓮田のほとり  縄文海進
奥東京湾の最深  栃木市 藤岡町 篠山貝塚へ 行ってみたくなる

西に並ぶ 群馬県板倉町には 寺西貝塚 離山貝塚 鶴ヶ島の人々
雨乞のため 池の水を汲みに出かけた 板倉雷電神社  吉見町からは
当時の人々がたどった道?  現在なら 武蔵水路沿い  護岸に見覚え
見沼代用水 渡った後は ヘルシーロードの横の道 利根川へ さいたま市で観た
若い風車 黒く 年代物の風車は オリジナル? 用水沿いには風車 流行った季節
あったのかも 利根大堰からは 埼玉用水路 武蔵水路 見沼代用水 対岸にて
雷電神社への道 示してくれる  邑楽用水路も  取水され

何か 対策を話し合う 水をつかさどる人々と たまたま この 大雨の午前中
中型観光バスで訪れた 一クラスに満たない数の小学生の傘 説明を聴き 記念撮影
私は 土手の上 利根川と 大堰  それぞれの水路へ 別れていく 分岐のフォーク
360度 見渡しながら(そう言えば浦和の仕事の帰り 荒川の水量がものすごく あれは
利根川から武蔵水路を経て 流れてきた水も 折も折 こうべを垂れる 黄金の稲穂
それは利根川の たっぷりな) 大堰にも 雷電神社にも  川魚の料理店
貝塚の先は遊水地 とちぎの国体カヌー会場 白いテント 遠い掛け声

所沢と 一キロも離れていない 富士見市には 水子貝塚 古入間湾
波音へ 耳を澄ます  蓮田も富士見も 市制50周年  富士見の動画に
板倉くん(インパルス)が出てきて また? 群馬と トライアングル

栃木や群馬は 山形や長野からの帰り路  ほとんど群馬 って 私には
ほとんど埼玉の 安堵感  海なし県 と 海底の人から 言われても
昔の人の 歩いた道が 繋がって 私も地続きで 拡がってゆく


「カラフルな選択」©しっぽ

執筆者プロフィール

片岡直子(かたおか・なおこ)

1961年生まれ、入間市出身。東京都立大学卒業。英国系製薬会社勤務の後、埼玉県と山形県の中学校国語科教諭を経て詩人・エッセイストに。第46回H氏賞受賞。詩集に『晩熟(おくて)』『曖昧母音』(いずれも思潮社)、『産後思春期症候群』『なにしてても』(いずれも書肆山田)他、エッセイ集に『ことしのなつやすみ』(港の人)、『おひさまのかぞえかた』(書肆山田)。朗読CD『かんじゃうからね』。青森県~山口県で詩の出前授業。詩とエッセイの講座を20年、各紙誌書評を16年間担当。2018年にラジオ放送局「FM NACK5」開局30周年「埼玉あなたの“街”自慢コンテスト」の川柳の選考をして以来、県内市町村パンフレットを眺めるのが愉しくなり、ほぼ持っています。


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