いないようでいてくれる

人類が言葉を持つ以前の状態を「ピュシス」と呼ぶらしい。言葉を持った人類は何が変わったのか? 言葉は人生の感情を全て言い表せるのか? はたまた仮そめの記号なのか?
「H氏賞」受賞詩人が紡ぐ言葉世界を、トカイナカの風に吹かれながら……。

第十九回 都市も忘れ物 ~見沼の帯から眺めると~

片岡直子

 

西武線組は たぶん 風車というのは 見逃せなくて 見晴公園
見沼代用水沿いの 意外なほどの古木群  丘もあり 子供を遊ばせる
ベビーカーの涼やかさ  奥には こんもりとした 神明社

加田屋川にも会いたくて 東へ行く前に 中川分水通り 上山口新田からの風景
新都心 あれは人造的な  手前の田園風景 もちろん人の手で 何が自然か
分からなくなる 斜面林 ソロの林  加田屋新田  見沼は
さいたま市の  忘れ物?  それどころか

膝子の一里塚 締切橋  移動はすべて 用水沿い 高校生の
自転車 横に並んで 東縁を南下する 見沼自然公園は 睡蓮の 花の盛り
水面に 浮かぶ  沼へ下る芝 老夫婦 幾組も ゆっくり 天の園の風景?
井澤弥惣兵衛為永の像  民家園には 古代蓮 茎は長く 水面から 伸びあがる
蓮の方が もっと好きかも  萬年寺 井澤の事務所 祈念碑を 拝んでみる

妻沼も見沼も分からなかった一年前 熊谷の妻沼へ しげく通い 今月は
見沼代用水  地図をつなげて 部屋へ広げ 行田の 利根大堰から 鴻巣
加須 久喜 蓮田 上尾から二つに分かれ 緑のトラスト一号地 パンフレット
新しくなっている 国昌寺の「開かずの門」 見沼の龍 女體神社の境内には
女の人たちだけ  巫女人形 孕む御神木  大崎の植物園 温室の中

偶然 見つけた「みちくさ道路」 激しい凹凸 樹間にのぞく
芝川第一調節池の広大さ  鳥の観察など なされている様子 歩く人
走る人 自転車の人 私のように みちくさ道路から 飛び出す人も

川口自然公園の 湿地の遊歩道を歩いたら 小学生も下校の時間 通船堀へ
八丁堤の 八丁橋辺り  閘門式の工夫 どうやって発想して? 西縁は工事中
竹の公園 高い木から 白い何かが斜めに舞って来る  幼い頃 こんな風に
立ち止まり 詩へ 手を伸ばした 東へ流れる川霧 東へ飛ぶトンボ

芝川を越え 東縁の通船堀 こちらは訪れる人も無く 大人しい猫と 鳩
「散歩してくれて ありがとう」というお爺さん 木曽呂の蕎麦屋 富士塚を
拝んでから  駅前交叉点  浦和パルコを過ぎると 通いなれた道


「まっすぐ」©しっぽ

執筆者プロフィール

片岡直子(かたおか・なおこ)

1961年生まれ、入間市出身。東京都立大学卒業。英国系製薬会社勤務の後、埼玉県と山形県の中学校国語科教諭を経て詩人・エッセイストに。第46回H氏賞受賞。詩集に『晩熟(おくて)』『曖昧母音』(いずれも思潮社)、『産後思春期症候群』『なにしてても』(いずれも書肆山田)他、エッセイ集に『ことしのなつやすみ』(港の人)、『おひさまのかぞえかた』(書肆山田)。朗読CD『かんじゃうからね』。青森県~山口県で詩の出前授業。詩とエッセイの講座を20年、各紙誌書評を16年間担当。2018年にラジオ放送局「FM NACK5」開局30周年「埼玉あなたの“街”自慢コンテスト」の川柳の選考をして以来、県内市町村パンフレットを眺めるのが愉しくなり、ほぼ持っています。


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