あんずの花里物語

思わず微笑んでしまうリリカルな画風で大人気の蟹江杏の世界観を、作品とエッセイでお届けします。

蟹江杏アトリエ日記vol.12 パーティーコンプレクス

アート 蟹江杏

Drink Wine
 

私はいわゆるパーティーが得意ではありません。
華やかな会であればあるほど苦手です。
自分主催の展覧会や出版記念のパーティーに出席するのも大変な騒ぎです。
とにかく、よいしょと腰を持ち上げないといけないし、
参加してもどうも空回りして疲れてしまいます。

仕事がら、異業種交流や画廊のオープニングパーティーなどに
呼んでいただく機会が多いのですが、
90%の確率で私の事務所のマネージャーO氏が代わりに出席しています。

「え〜、またですかっ! 僕が行くと、受付でみなさん
えっ? 杏さん来ないの? あなた一人で来たの?
って顔されるので気まずいからたまには出席してくださいよ〜」
とOマネに常々言われています。

けれど、あくまでパーティーが苦手なだけで、嫌いなわけではありません。
その証拠に、お誘いいただくととてもうれしい気分になり、
その時点ではむしろ楽しみで待ち遠しいのです。

久々にあの人に会えるなあ、どんな新しい出会いがあるかしら?
お洋服は何を着て行こうかな、手土産はどうしよう?
私なんかを誘っていただけるなんて光栄だなぁ。
なんて考えている時は確実にワクワクしているのですが、
いざ当日の朝になると、なんだか突然、どうしても行きたくなくなってしまい、
Oマネに「お願いっ、代わりに行って来て!」と、なるわけです。

本当にお腹が痛くなったり、具合が悪くなる時もあります。
ですので、すっかり私の事を「来ると言いながら結局欠席する人」と、
思っている皆さんも多いと思います。
この場を借りて数々のドタキャンを謝りたいです。
その節は失礼いたしました。
ごめんなさい。

けれど、そんな中、2020年からの新型コロナウイルスの流行により
多人数の会食やいわゆる「パーティー」にお呼ばれする機会もなくなり
「パーティー行く行かない問題」で
私が事務所にワガママを言うこともすっかりなくなりました。

こうして平和な暮らしをしていたのですが、ないものねだりとはこの事で、
流石に2年間もお誘いが来ないと少し物足りない気持ちになってきました。
たまには、メイクして綺麗なお洋服を着て華やかな場所にお出かけしたくなりました。

そして、パーティー問題から離れて今、こう思いはじめています。
「私はパーティーが本当は好きなのではないか」
改めて自分の性質を分析すると、
自分がパーティーを苦手とする理由が見当たらないのです。

  • 美味しい食べ物がある。→ 私は食いしん坊です。
  • 美味しいお酒がある。→ 私は自他共に認める酒好きです。
  • 楽しい会話がある。→ 私は、人間好きですし、好奇心旺盛です。

では、なぜ今まで、パーティーが苦手だったのでしょうか。
どうして今まで無下に断ってきてしまったのだろうか??

そうなると、私の代わりに出席していたOマネは
さぞかし楽しい思いをしたに違いない。
どんな美味しい料理を食べたのか。
きっと高級酒を飲んだのだろう。
もしかしたらそこで、運命の出会いをしたかもしれない。
と今まで自らドタキャンしてきた事を棚に上げて、
Oマネが途端に羨ましくなってきました。

悔しいのを隠しつつさりげなく彼に
「ねえ、今まで私の代わりに出たパーティーは楽しかった? どうだった?」と聞きました。

すると、パソコンを打つ手を止めて、
なんでそんな事聞くんだよという顔をして、こう返してきたのです。
「え?! はあ、まあ、それなりに楽しかったですよ。みんな良い会でした」

そのサラリとした口調〜!
やっぱり、やっぱりか!
楽しかったんだな、高級酒飲んだんだな、と私。

よーし! めでたくコロナ禍が明けたら、私もパリピの仲間入りだ。
内心意気込んではおりますが、
Oマネに話すと、
「どうせ杏さんはその日になったら、今日は行くのやめとくって言い出しますよ」
と言われそうなので、口には出さず、
虎視眈々とパーティーデビューの時を待っております。

Drink Wine

タイトル:「Drink Wine」
サイズ:290×130mm
シート価格(税込):38,500円
額装価格(税込):51,700円

※別途、送料がかかります。
販売数量: 5枚限定
お届けの目安:約3カ月

蟹江杏コレクション

執筆者プロフィール

蟹江 杏(かにえ・あんず)

画家。東京生まれ、埼玉県飯能市の「自由の森学園」を卒業。「NPO法人3.11こども文庫」理事長。ロンドンにて版画を学ぶ。美術館や全国の有名百貨店など、国内外で多数の展覧会を開催。新宿区・練馬区・日野市をはじめ各地の都市型アートイベントにおいて、こどもアートプログラムのプロデュースを手掛ける。東日本大震災以降は、「NPO法人3.11こども文庫」理事長として、被災地の子ども達に絵本や画材を届けたり、福島県相馬市に絵本専門の文庫「にじ文庫」を設立するなどの活動を行う。また、2020年から「SDGs JAPAN」と連携し、アートやアーティストがどのようにSDGsに貢献できるかを、様々な分野のアーティストとともに模索、牽引していく。

https://www.atelieranz.jp

蟹江 杏

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