あんずの花里物語

思わず微笑んでしまうリリカルな画風で大人気の蟹江杏の世界観を、作品とエッセイでお届けします。

蟹江杏アトリエ日記vol.19 アンズはへびがすき

アート 蟹江杏

採集

私は生き物が好きです。
小さな頃から、昆虫やら爬虫類やら動物やらと遊ぶのが大好きでした。
そこで昨年、へびが大好きな女の子の絵本を出版しました。
『ハナはへびがすき』(福音館書店)です。

絵本を描くにあたり、沢山のへびをスケッチしました。
その気持ちが通じてしまったのでしょうか。
気づけば、
軽井沢アトリエの庭にどうやら住み着いてしまったようなのです。

しかも今まで出会ったへびの中で1番大きなヤツ。
柄を見ると、黄色いネックレス模様はないのでヤマカガシではない・・・。
マムシっぽいかな〜。ヤバいな〜。
トグロを巻いて鎮座していたり、
草むらをシュルシュルとお散歩する姿に出くわすようになりました。

しかも、絵本の表紙の絵のように、
蛇苺まで群生する始末。
蛇苺も可愛らしくて大好きだから心を込めて描いたのだけど、
蛇苺の育つ場所はへびが住みやすい湿気などの条件が揃っているのだとか・・・。
呼んじゃってる? 私・・・。
やっぱり、噛まれたら怖いし、困ったなぁと思っていました。

私の森のお家は、
母家と離れの2棟に分かれています。
私は母家で寝泊まりをしています。
離れをアトリエにしていて、仕事はそっち。
アトリエ2階にスタッフの宿泊用のお部屋があります。
母家とアトリエは徒歩15秒。
雨の日でも木が生い茂っているので、
そんなに気にならず移動できます。

ご近所は皆さまのイメージどおりの避暑地の高級オシャレ別荘ばかり。
うちは築70年というシャビーな山小屋で、庭もボウボウでワイルド。
良くも悪くも異彩を放っております。

それでも私にとっては、都会から離れて自然の中で絵が描ける環境をこの上ない幸せと感じます。
なんと言っても、10℃くらい気温差があるので夏は涼しくてサイコー。
これぞ、トカイナカデュアルライフ!
でもこの山小屋、ちょっと面倒なのが、シャワーを浴びる時。
母家の水圧が弱いので、普段は離れの方を使うのですが、
そのために15秒間外に出なくてはなりません。

その日も、バスタオルを抱えて母家から離れへ。
アトリエ入口ドア付近。
・・・ん?
マダラ模様のアイツ。
トグロをグルグルしながら、
いたっ!
「わっ〜〜!!!!!」
驚いたのは私だけではありません。
その瞬間、へびもクルッとこちらを振り向き顎を外したような大きな口を開いて
「わ〜〜!!!!!」
と言ったか、言わないか・・・グルリと方向転換してグルグルグルグル〜と、
一目散に逃げていきました。

へびには耳がないので私のあげた大声は聞こえないはず。
音の振動で危険を察知し、慌てて逃げ出したのでしょう。
近づくと攻撃してくるという説もあり、私はへびを庭で発見してからというもの、
ドシン、ドシンと、大袈裟に足を踏み鳴らして歩くようになりました。

毎日森の中でボサボサ頭で、薄汚れた作業着を着たアラフォーノーメイク女が
膝を高く上げて、地面を踏み鳴らしながら歩きまわっている姿の方が、
よっぽど怖い気もしますが、
効果があるのかないのか、
ここ最近、あのへびは現れてないな〜。

そんなある日、自然観察仲間の友人から軽井沢の野鳥についてのDVDが届きました。
鳥の鳴き声を聞き分けたいな〜と思いながら見ていると、
見覚えのある模様のへびが画面に映りました。

あっ!
あの模様はうちの庭にいるアイツだ!

野鳥の天敵として紹介されたのはアオダイショウ。
なんだあ、アトリエの庭に住んでいるだろうへびはマムシじゃなくてアオダイショウかぁ。
マムシは噛まれたら命を落とすこともある猛毒へび。
いっぽうのアオダイショウも噛まれたら痛いし、
ウイルスを持ってる可能性はあれど、毒へびではないのです。

それがわかった途端、
無性にあのへびちゃんに会いたくなって、
毎日、キョロキョロしてるのですが、最近はめっきり姿を現してくれません。
きっと、私のドシンドシン攻撃が怖くて引っ越しちゃったんだね。

自然の中で暮らしていると、目には見えなくても沢山の命の気配がします。
鳴き声が聞こえた時、
かすかな葉の動きで存在を感じた時、
虫の羽音、
葉っぱの齧りかけ、
コロコロうんちも、
真夜中の足音も・・・、
私の想像力を激しく掻き立てます。
そうして、彼ら彼女らの姿が鮮やかに脳裏に現れたら、
そこはもう、言葉では表すことのできない美しい世界となるのです。

アオダイショウだろうが、
マムシだろうが、
へびは怖いよ、嫌いだよ、
と、これを読んで思ったみなさん。
いやいや、是非、森を散策してみてください〜。
怖そ、な生き物も、
よく見りゃ意外とかわいいのですよ。
とはいえ、くれぐれも、
都会でも田舎でも「毒」のある生き物にはご注意を。

採集

タイトル:「採集」
サイズ:210×170mm
シート価格(税込):39,000円
額装価格(税込):44,000円

※別途、送料がかかります。
販売数量:3枚限定
お届けの目安:約3カ月

蟹江杏コレクション

執筆者プロフィール

蟹江 杏(かにえ・あんず)

画家。東京生まれ、埼玉県飯能市の「自由の森学園」を卒業。「NPO法人3.11こども文庫」理事長。ロンドンにて版画を学ぶ。美術館や全国の有名百貨店など、国内外で多数の展覧会を開催。新宿区・練馬区・日野市をはじめ各地の都市型アートイベントにおいて、こどもアートプログラムのプロデュースを手掛ける。東日本大震災以降は、「NPO法人3.11こども文庫」理事長として、被災地の子ども達に絵本や画材を届けたり、福島県相馬市に絵本専門の文庫「にじ文庫」を設立するなどの活動を行う。また、2020年から「SDGs JAPAN」と連携し、アートやアーティストがどのようにSDGsに貢献できるかを、様々な分野のアーティストとともに模索、牽引していく。

https://www.atelieranz.jp

蟹江 杏

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