あんずの花里物語

思わず微笑んでしまうリリカルな画風で大人気の蟹江杏の世界観を、作品とエッセイでお届けします。

蟹江杏アトリエ日記vol.20 青い鳥のくる庭で

アート 蟹江杏

オオルリの庭

私にはお友達が少ないです。
正確にいうと集団の中で自分がどう振舞って良いかわからないので、
友達を作るのが苦手です。

そんな私に、最近ものすごく趣味の合うお友達ができました。
長身の爽やか年下イケメンです。
私の知らない知識をなんでも優しく教えてくれるし、
重い荷物を持ってくれたり・・・素敵な人。
でも忙しいお方だから、彼の休みの時にしか会えないんです。
一緒にいると時間を忘れて夢中になれます。
そして、一気に距離を縮めた私達。

これはトキメキ物語がはじまる書き出しじゃないか、と思った読者の皆様すみません。
はい、野鳥博士N君と私のマニアックな生物観察日記のお話です。

N君は13歳、中学2年生。
とにかく、野鳥についての知識量は並大抵のものではありません。
ママと一緒に小さな頃から日本全国のみならず世界の野鳥を追いかけて
日々研究を重ねています。

野鳥図鑑が丸ごと彼の頭の中に入っている模様。
それも1冊や2冊なんてもんじゃありません。
おまけに、私が大好きな虫やトカゲや蛇についてまでなんでも教えてくれて、
さらには捕まえてプレゼントまでしてくれるから、もう夢のよう。
軽井沢にある森のアトリエに、
学校がお休みの時を狙って来てくれています。

アトリエのボウボウになった庭を野鳥が集まる素敵な森にする
と約束してくれたのは春のある日。
野鳥を呼びたくてお家の形をした木造りの小さな餌台を昨年から庭に設置してあったのですが、
お目当ての鳥どころか一羽も餌台に来ないので、一年間も放置してありました。

それをN博士にご相談したところ、
博士は餌台を小脇に抱えて庭の真ん中に立つと、
空を見上げてしばらくキョロキョロしています。
人差し指を天高く掲げて西から東に、北から南に向けて動かします。
博士の指がピタリと止まりました。

「ここやな」

ベランダからよく見える庭の真ん中の糊空木(ノリウツギ)の根元から3メートルあたり。
博士の指定した場所へ餌台を移動。
すると驚いたことに、一年間全く見向きもしなかった小鳥達が、
たった数日で次々とやってきたのです。

どうやら博士は、空を飛んでいる鳥の気持ちになって、どこが一番見やすいか、
止まって餌を啄める枝があるかなどを確認して設置場所を決めたようなのです。
初めのうちはシジュウカラ。そのうちヤマガラ、ゴジュウカラ・・・見たことないような小鳥達。
近くで生まれたシジュウカラ三兄弟も巣だって餌箱の常連さんになりました。
今では、森のアトリエの庭には混群になってさまざまな鳥たちがやってきています。

先日、夏休みを利用して少年N博士は、
今度は青い鳥(オオルリ)を呼ぼう作戦を実行するために森のアトリエに来てくれました。
オオルリの好きな、タンパク質が豊富な生きたミルワーム(虫嫌いな人は閲覧注意の小さな虫)を
栗の木の切り株に設置している彼に
「絵を描きながらオオルリが見れたらいいな〜」と私。

すると、少年N博士、
「そうなればバードウォッチングをしにみんなが来ますよ! カフェにできますよ!! そしたらすごいですね!!」って・・・。
なるほど確かに・・・?!
って、いやいや博士、意外と商売人。
人間がいっぱいきたら困りますよ。
野鳥のみでお願いします〜。

ここは森の秘密のアトリエ。
秘密の遊び場。

それにしても、N君は中学2年生。
小さな頃から大好きな野鳥をここまで突き詰めて研究できるのは、
陰ながらのご家族の協力があったからに違いありません。

私も絵を描くのが大好きでした。
子ども部屋の壁を全て模造紙にしてくれて、
落書きでいっぱいになるたびにパパが張り替えてくれていたっけ。
思いどおりの絵が描けなくて、泣きわめいてママに八つ当たりしていたっけ。

子どもの「好きという気持ち」を周りの大人が
根気よくどんなふうに大切にしてあげられるかで、
彼ら彼女らの見る未来の世界は大きく変わるのでしょうね。
これを可能性と呼ぶのでしょうか。

私もN博士と、次はどんな遊びをしようかしら。
楽しみだな。
少年N博士との自然観察日記、また皆様にもご報告いたします。

さて、今日も、私は森の庭で、青い鳥を待ちながらお絵描きをしようと思います。

オオルリの庭

タイトル:「オオルリの庭」
サイズ:380×380mm
シート価格(税込):187,000円
額装価格(税込):200,000円

※別途、送料がかかります。
販売数量:4枚限定
お届けの目安:約3カ月

蟹江杏コレクション

執筆者プロフィール

蟹江 杏(かにえ・あんず)

画家。東京生まれ、埼玉県飯能市の「自由の森学園」を卒業。「NPO法人3.11こども文庫」理事長。ロンドンにて版画を学ぶ。美術館や全国の有名百貨店など、国内外で多数の展覧会を開催。新宿区・練馬区・日野市をはじめ各地の都市型アートイベントにおいて、こどもアートプログラムのプロデュースを手掛ける。東日本大震災以降は、「NPO法人3.11こども文庫」理事長として、被災地の子ども達に絵本や画材を届けたり、福島県相馬市に絵本専門の文庫「にじ文庫」を設立するなどの活動を行う。また、2020年から「SDGs JAPAN」と連携し、アートやアーティストがどのようにSDGsに貢献できるかを、様々な分野のアーティストとともに模索、牽引していく。

https://www.atelieranz.jp

蟹江 杏

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