移住の真相!〜なかなか表には出ないけど

全国でトカイナカムーヴメントが起きている。
移住マッチングサイトSMOUTでも上位に食い込む人気自治体岡山県真庭(まにわ)市。その面積が東京23区に匹敵する街に移住した若者の移住実感は──?

最終回 地域の祭り。だれがお神輿を担ぐのだろう。

甲田智之

お神輿、だれが担ぐんだろう?

ぼくの住んでいる地域では、秋の祭りに合わせて「お神輿(みこし)」が出ます。ここ2年ぐらい新型コロナの影響でなかったのですが、今年(2022年)は出すことになりました。

お神輿が出ると決まってから、とたんにザワザワした気持ちが……。ぼくは気になっていました。

……お神輿、だれが担ぐんだろう?

噂では、めちゃくちゃ重いらしい(ぼくはまだ担いだことがありません)。めちゃくちゃ重い神輿を担いで、高台にある神社から石段を下り、集落を約3時間かけて練り歩く。ちょっと進んでは退いて、またちょっと進んでは退いて。声をあげながらお神輿を担ぐ。

担いだことのある人はみなさん、口をそろえて言います。
「肩が上がらなくなる」「首のあたりがおかしくなる」「膝がもう使いものにならなくなる」
おそるべし、お神輿……。ちなみに、お神輿を担ぐ人を輿守(こしもり)と呼んでいます。

そして、各自治会から必ずひとりは輿守を出さなければならない。

「じゃあ、甲田くんが輿守をすればいい」で解決するほど、話は単純ではありませんでした。むしろ、何度「ぼくが輿守をすれば、スムースにことが進むのに」と思ったことか。

ぼくは自治会のなかで、神社総代(そうだい)という役(やく。役割の意)を持っていました。祭りの準備をしたり、氏神様のお世話をする務めです。そのため、お神輿が出たときも礼装に身を包み、一緒についてまわる必要があります。輿守ができないのです。

しかも、「輿守してもらえませんか?」と声をかけるのも、神社総代の務め。ぼくが皆さんに「輿守してもらえませんか?」と声をかけてまわらなければなりません。

全12世帯ぐらいの自治会のなかで、世帯主としてはぼくが一番の若手。加えて、移住してきた新参者。そんなぼくが輿守をお願いしなくちゃいけないなんて……。正直、震えました。

お神輿を出す前に、神社総代が集まって清掃などを行います

お願いにいけば、関係性にひずみが入る?

まずは、これまでどんなふうに輿守の順番をまわしてきたのか、おとなりさんに確認。「順番でいくと、Aさんかな」とヒントをもらい、Aさんのもとへ。ところが、「いやいや、そういう順番とかいうルールはなかったよ。Bさんのところに行ってみたら?」とのこと。

Bさんのところでは、「前回ぼくやったから、連続はちょっとごめんね。Cさんはどう?」、Cさんのところでは、「お祭りはぼくにもべつの役があって動けなくて。Dさんは?」、Dさんのところでは、「ちょうどその日、仕事で」、Eさんのところでは、「膝が悪くて」。

ぐるぐると自治会をまわります。ぐるぐるとまわりながら、「あかん。これは関係性にひずみが入るやつや……」と。大変なことを押しつけてまわっているような気持ちになってきたのです。

お神輿を担ぐのは、やっぱり大変です。文化として大切なのは皆さんわかっているのですが、頭ではわかっているのですが、どうしても大変さが勝って、二の足を踏んでしまう。「(2万3000円というお金は出るのですが)ぜひともやりたい」という人はなかなかいません。

でも、神社総代として必ずひとりは輿守を出さなければならない。そうは言っても、輿守をしてくれる人がいない……。「出せなかったらどうしよう」と不安に襲われ、眠れない日がつづきました。

どうなってしまうんやろか。

そんなとき。
家族で遊びに行ったマルシェイベントに、出店していたひとりの友人。彼になにげなく「お神輿担ぐのとか、興味ない?」と尋ねたところ、「やりますよ」とまさかの快諾。そのときの安堵たるや、お神輿と同じぐらい重い肩の荷がズドンと下りたようでした。

ところが、問題はふたたび押し寄せてきます。

自治会外の人に、輿守をお願いしてもいいものか。
自治会内からなかなか見つからなくて、わらにもすがる思いで声をかけたので、もし「いやいや。自治会内から出さなくちゃ」となれば、もうお手上げです。

緊張しながら、お近くの方に尋ねたところ。「ぜんぜん大丈夫」とのこと。安堵、ふたたびです。ほんとに、ことなきを得ました。

今回のことで、地域行事をつづけていく難しさを切に感じました。高齢化が進み、若者が少なくなっている昨今、お神輿の担ぎ手ひとつでも、人がいないのです。コロナを機にやめてしまった地域行事もある、と聞いています。

消滅していくのも自然の流れ、と言ってしまえばそうなのかもしれません。でも抗えるうちは精いっぱい抗いたい。縮小したり、形を変えても、本質さえ失わないのならつづけていきたい(……地域における祭りの本質がまだおぼろげなのですが)。

これからも祭りがつづいていきますように。

無事に、お神輿の担ぎ手「輿守」が揃いました

執筆者プロフィール

甲田智之(こうだ・ともゆき)

1984年生まれ。大阪府出身。京都精華大学卒業。一般企業の営業職を経て、ライター・編集者として独立。2016年に岡山県真庭市へ移住。元真庭市地域おこし協力隊。現在、広告代理店の株式会社はこらぼ取締役、地域づくりの一般社団法人コミュニティデザイン理事として、ローカルメディアや高校教育、コミュニティ創出に携わっている。また作家として小説の執筆、一般書籍や雑誌の編集、自分史の代筆などもしている。著書に『中村文昭という生き方 出会いを通して自分に出会う!!』(ごま書房新社)、原作付きノベライズ『レイワ怪談』シリーズ(学研プラス)などがある。

甲田智之

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