神山典士・風の民の呟き

神山典士

トカイナカから掘り起こした物語、眠っていた鉱脈、やっと出会えた人、
長い間のラプソディ。そんな宝物を折々に綴ります。
トカイナカからの贈り物──。

第2回 コロナ禍での脱都会(=トカイナカの隆盛)は令和の「列島改造」だ〜高橋公氏(認定NPO法人ふるさと回帰支援センター理事長)

「今の日本には静かな革命が起きている」──。
そう語るのは、東京から地方への「移住や二地域居住」の流れを約20年間見続けてきた男、高橋公氏(認定NPO法人ふるさと回帰支援センター理事長)。その革命という言葉の真意は何なのか? コロナ禍が吹き荒れる中、日本社会はどう変わろうとしているのか? 

「脱都会」思考が広がっている

 2020年の当センターへの移住相談は、コロナ以前と比べて大きな変化があります。まず相談(面談、メール、電話)自体がコロナ前の約3割アップ。「脱都会」思考の広まりが鮮明になった。

 県別に見ても、19年まで3年連続トップだった長野県が3位に後退し、1位は静岡、2位が山梨。ベスト10に神奈川と群馬が入り、ベスト20 には茨城と栃木も入った。明らかに東京の周辺の県に人気が集まりました。

 中部でも名古屋近郊の三重や岐阜が増えたし、関西でも和歌山や滋賀が増えた。つまり「リモートワーク」の広がりによって、「時々なら都会に出られるエリア」に人気が集まっている。私は「静かな革命」だと思っています。

高橋公(たかはし・ひろし)氏 
認定NPO法人ふるさと回帰支援センター理事長。1947年福島県生まれ。神道夢想流杖道5段。早稲田大学で反戦連合を結成し全共闘運動闘士に。大学を中退し自治労から連合(日本労働者組合総連合会)へ。生粋の工作者としての眼光は鋭い

── 高橋さんが仰る「時々なら都会に出られるエリアとは、私たちが掲げる「トカイナカエリア」でもあります。そこに脚光が当たっているわけですね。もう一つの変化は、そもそも02年のセンター立ち上げ当初は、相談者の想定年齢は60歳だったと伺いました。いまは大きく変化しているようですね。

 当初は、戦後生まれた団塊の世代が相談者の対象でした。60年代に中学・高校を卒業して集団就職で東京、名古屋、大阪に出てきたこの世代が定年になる07年をメドに、彼らが胸を張って故郷に帰れるシステムを作ろうと考えた。当時5万人にアンケートを取ったら、約4割が「退職後は年金を糧に故郷で悠々自適に暮らしたい」と答えたのです。

 でも、現実的には彼らが故郷に帰っても、家も仕事も彼らを受け入れる制度もない。だから約40年以上働いた人たちのために、故郷回帰を社会運動として盛り上げたいと思ったのです。ところが年を追ってどんどん相談年齢が若くなった。ことに08年のリーマン・ショック以降は若年化していきました。

 同時に相談者数は右肩上がりで、12年に東銀座から有楽町の東京交通会館の2フロアに引っ越しました。今では39道府県(東京、大阪には同センターがある)と2つの政令指定都市がブースを出して、移住や二地域居住の「受け入れ情報」を伝えています。設立当初と比べると相談数は約10倍、そのうち9割は50代以下です。

ふるさと回帰支援センター主催の「ふるさと回帰フェア」。コロナ禍ではリアル開催が見送られオンラインになっているが、例年多くの人々を動員する

── これからの日本社会はどう変化するべきでしょう。

 コロナで生まれた「脱都心のムーブメント」を、まずは全国に20ある政令指定都市が受け皿になるべきです。そうすれば「分散型社会」が生まれます。その流れを全国60余りの中核市がさらに引き受ける。それはある意味で1970年代に田中角栄さんが提唱した「日本列島改造論」のアフターコロナの令和版になる。そこにこそ、この国の未来があると思っています。

執筆者プロフィール
神山典士(こうやま・のりお)

ノンフィクション作家、埼玉トカイナカ構想代表。1960年生まれ、埼玉県出身。入間市立豊岡小・豊岡中、埼玉県立川越高校卒業。ときがわ町トカイナカハウスでの生活を満喫中。美味しいうどんや野菜、懐かしき昭和テイストの温泉、移住者たちとの交流、あとは地元の皆さんとの交流を画策しています。著書に『成功する里山ビジネス ダウンシフトという選択』(角川新書)など多数。また、今秋に『トカイナカ暮らしの流儀』(仮題)を上梓予定。

http://norio-kohyama.com/

神山典士


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