第1回 移住の背中を押してくれる3つのコト

くらし 甲田智之

移住の真相!〜なかなか表には出ないけど

全国でトカイナカムーヴメントが起きている。
移住マッチングサイトSMOUTでも上位に食い込む人気自治体岡山県真庭市。その面積が東京23区に匹敵する街に移住した若者の移住実感は──?

「移住しようかな」の背中を押してくれるのは、婚活パーティーではなく。

移住のもともとのきっかけは「婚活パーティー」でした。

「あんた、彼女おらんねやろ。この婚活パーティー来(き)ぃや」
知り合いの主催者に誘われて、大阪から、会場となる岡山県真庭市の湯原温泉へ。

ただ、真庭市も湯原温泉も、聞いたことがありませんでした。

中国地方の地理に明るくなかった僕は、帰るときまで、自分がどこにいるのかわからず、「おそらくここは鳥取県だろう」とかん違いしていました。
ただ、婚活パーティーでは大奮闘。
人見知りをこじらせながらも、決死の覚悟でひとりの女性に話しかけました。

あれから7年。
僕はいま、大阪から移住して、岡山県の北部「真庭市」に住んでいます。
子どもが2人いて、奥さんはあのときの婚活パーティーで話しかけた女性です。

ゆっくり、のびのび子育てをしています

移住なんて考えたこともありませんでした。
大阪の下町、十三(じゅうそう)に生まれて、30年弱。ずっと大阪に住んでいました。両親の実家も大阪にあって、地方にはほんとに縁のない人生です。
漠然と「このまま、大阪で暮らすんだろうな」と思っていました。

ただ、彼女と結婚が決まって、「大阪に住むか、真庭に住むか」という問題が、ドンと目のまえにあらわれました。
どちらに住むのがいいのだろう。僕は、とても迷っていました。

大阪は便利で、知り合いもいます。仕事もそのままつづけることができます。
一方の真庭は、よく知りません。知り合いもいません。田舎らしいけど、仕事はどうすればいいのだろう。不安なことがいくつもあります。
それでも、移住しました。

決め手となった要素が、3つあります。
そして、移住にはこの「3つの要素」が欠かせません。この3つが「移住しようかな」と思う背中を押してくれるのです。

  • 自分の価値観を見つめなおすこと
  • 人との出会い
  • とても小さなきっかけ

この3つです。

 余白と、奥さんと、占いと。

──自分の価値観を見つめなおすこと。

価値観とはひらたく言えば、「自分は何を、いちばん大切に思っているのだろう?」の答えです。
移住を考えるまえは、忙しく過ぎる日々のなかで、そんなことを考える暇もありませんでした。
……あるいは、その問いから逃げていたのかもしれません。
移住のことがなかったら、きっと考えないままだったと思います。
「自分がいちばん大切に思っていることは何だろう?」

僕がいちばん大切に思っていること。
それは「余白」でした。
これから過ごす奥さんとの時間。子どもが生まれたら子どもと過ごす時間。ひとりでもの思いにふける時間……。
時間をつくるだけが余白ではありません。

友だちと心を通わせられるたっぷりとした心の余白。想像力を羽ばたかせる余白。目に見えない価値に触れる余白……。
それが手に入るのは、どちらだろう。
このまま大阪で働きつづけて、いつか「余白」が手に入るだろうか。僕は首を横に振りました。

いつもの風景にも余白がたっぷりあります

──人との出会い。

人との出会いで言えば、僕の場合はまちがいなく、奥さんです。
ただ人によっては、たまたま出会った地元の人かもしれません。最初に応対してくれた行政の担当者かもしれません。
仕事よりも、住まいよりも、人との出会いが移住には欠かせません。

田舎ならではの素朴な人や心優しい人、魅力的でおもしろい人……。
真庭市にはそんな人たちがたくさんいて、「田舎といえば、おじいちゃんとおばあちゃんばかり」という僕の固定観念はみごとにくつがえりました。
なにより人との出会いのうしろに、仕事も住まいもついてきます。

また、地元の人たちはひとりひとり、文化を持っています。
文化──、その土地でずっと自分たちの暮らしを守ってきた習慣や知恵です。地元のお祭りをずっと守ってきた心です。

ふらりと覗けば、地元の人たちの文化が見えます

その土地ならではの山菜の食べ方。お祭りのときしか使わない縄の縛り方。地元の人だけに通じる方言と言いまわし。
いつか自分もそんな文化を持つ人になりたい、と地元の人たちが持つ唯一無二の文化に、興味が尽きませんでした。

──とても小さなきっかけ。

最後の最後、ぽんと背中を押してもらうきっかけです。
移住を決めるうえで、この「とても小さなきっかけ」が意外と重要なんです。

たとえば、訪れたところが「むかし、おばちゃん家で見た風景とよく似ていたから」だったり、「その日、星がきれいだったから」だったり。
忙しく過ぎていく日々を、少し立ち止まらせてくれる。そんな瞬間がおとずれます。

僕の場合は、お会いしたこともない占い師さんの言葉(メール)でした。

「あなたは、真庭に行ったほうがいいよ」
「どうしてでしょう?」
「そういう風に占いで出ているから」

知り合いから紹介してもらった占い師に、人づてでそう言ってもらい、ほんとにその言葉で、ぽんと背中を押してもらったのです。

真庭に来て、いろんな遊びを知りました

メディアでも「移住」が話題になることが増えました。
移住を考える人も増え、実際に真庭市にも「移住を考えているんです」という問い合わせが増えているようです。
でも、どうすればいいかわからない。移住しようかな、なんて迷っている。
そんなときは、3つの要素を求めてみてください。
「いつかは」と思っていた移住が、グンとまえに進みだします。

執筆者プロフィール

甲田智之(こうだ・ともゆき)

1984年生まれ。大阪府出身。京都精華大学卒業。一般企業の営業職を経て、ライター・編集者として独立。2016年に岡山県真庭市へ移住。元真庭市地域おこし協力隊。現在、広告代理店の株式会社はこらぼ取締役、地域づくりの一般社団法人コミュニティデザイン理事として、ローカルメディアや高校教育、コミュニティ創出に携わっている。また作家として小説の執筆、一般書籍や雑誌の編集、自分史の代筆などもしている。著書に『中村文昭という生き方 出会いを通して自分に出会う!!』(ごま書房新社)、原作付きノベライズ『レイワ怪談』シリーズ(学研プラス)などがある。

甲田智之


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