学んで!埼玉

首都のベッドタウンと呼ばれながら、埼玉県には東京にのみ込まれない伝統と個性を持った学校が多くある。教育、社会運動を専門とし、各メディアで活躍するジャーナリスト・小林哲夫が「教育県」の素顔を探る。

第7回「東京五輪」日本代表、埼玉育ちのアスリートたち

小林哲夫

メダリストも続出のオリンピアン

 東京2020五輪日本代表について埼玉の小中学校、高校、大学などの出身者(在学生)を調べてみた。

 ソフトボールで世界一となった我妻悠香は川口市、森さやかは毛呂山町で育った。2人とも、ソフトボールの強豪、星野高校(川越市)を卒業した。同校の起源は1897(明治30)年につくられた星野塾までさかのぼる。1964年に星野女子高校として開校し、2003年に現在の校名に改称した。同校出身にはセーリングの須長由季もいる。

 銀メダルを取った女子バスケットボールチームには、川越市出身の宮崎早織、朝霞市で育った本橋菜子がいる。自転車で銀の梶原悠未は和光市生まれで、筑波大附属坂戸高校(坂戸市)から筑波大に進む。残念なことに同高校の自転車競技部は、20年末で廃部となった。柔道で金の新井千鶴は寄居町出身で県立児玉高校(本庄市)を卒業し、三井住友海上の柔道部で活躍している。

 大宮周辺の公立高校から3人が日本代表に選ばれた。バドミントンの奥原希望は県立大宮東高校、女子サッカーの塩越柚歩は県立大宮武蔵野高校、陸上の鈴木碧斗はさいたま市立大宮北高校の出身である。

 県内の大学出身者として、城西大(坂戸市)から陸上の山口浩勢、佐藤拳太郎が選ばれた。駿河台大(飯能市)からはカヌーの足立和也と矢沢亜季が代表となっている。早稲田大スポーツ科学部(所沢市)を埼玉に含めれば、陸上の山内大夢などもいる。前出の鈴木碧斗は東洋大朝霞キャンパスの陸上部グラウンドで走力に磨きをかけた。

 朝霞市には自衛隊体育学校訓練所があり、金メダリストを生み出している。レスリングの乙黒拓斗、フェンシングの山田優、柔道の濵田尚里である。ボクシングの並木月海が銅を獲得した。並木は花咲徳栄高校(加須市)の卒業生である。

「東京2020」日本代表において埼玉で一大勢力を誇る学校がある。秀明英光高校(上尾市)だ。卒業生12人を五輪の舞台に送り込んだ。これは代表選手の出身高校の中で最も多い。12人全員が水球の選手であり、同校水球部はインターハイで4回優勝、9回準優勝している。秀明学園水球部総監督の加藤英雄さんに話を聞いた。

「秀明水球の合言葉は電光石火です。攻撃的なスタイルを貫くことを掲げています。世界で通用するため、判断の速さ、アジリティー(俊敏性)、視野の確保など、高い技術を身につけられるように指導しました。秀明英光出身の選手は背が高くないが、全体的にスピード感があり、欧米の身長2メートル近い選手と互角に渡り合えます」

 埼玉栄高校(さいたま市)出身には知名度が全国区となった、競泳の瀬戸大也、ウエイトリフティングの三宅宏実がいる。今回、同校から水球、射撃、体操の4競技6人が代表に選ばれた。人数は秀明英光高校に次ぐが、実質的には日本最強のスポーツ校といっていい。

 埼玉の高校、大学にはアスリートを育む土壌がある、と自信を持っていい。全国に訴えよう。スポーツ留学ならば彩の国へ。

(敬称略)

執筆者プロフィール

小林哲夫(こばやし・てつお)

教育ジャーナリスト。教育、社会問題を総合誌などに執筆。新刊『平成・令和 学生たちの社会運動 SEALDs、民青、過激派、独自グループ』(光文社新書)のほか、『神童は大人になってどうなったのか』(朝日文庫)、『学校制服とは何か その歴史と思想』(朝日新書)、『大学とオリンピック 1912-2020 歴代代表の出身大学ランキング』(中公新書ラクレ)など著書多数。

小林哲夫

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