移住の真相!〜なかなか表には出ないけど

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第9回 家庭菜園をするうえで、絶対に欠かせないこととは。

甲田智之

前回から続く

キュウリとトマト、そしてマリーゴールドを植えて

前回は、憧れだけで家庭菜園をはじめるのはとっても危険。少しでも「正しい知識」を入れてからはじめましょう、とお伝えしました。

今回は、その続きです。田舎暮らしをするなかで思い知った、「家庭菜園をするうえで、絶対に欠かせないこと」をお伝えします。

さて、苦土石灰(くどせっかい)をまき過ぎて、畑を真っ白にしてしまった僕。せっかくの畑を不毛な土地にした反省から、「このままではいけない」と家庭菜園について勉強をしました。

勉強したさきに夢見るのは、子どもたちと一緒にもぎって、その場で食べる。朝ごはんの食卓に採れたて野菜がズラリと並ぶ。理想の「田舎暮らし」です。

5月のこと。
気を取りなおして、なんとかよみがえった畑に、キュウリとトマト、そしてムスメが「植えたい」と言ったマリーゴールドの種をまきました。初心者にとっては、苗から育てるほうが良かったのですが、ムスメがどうしても「種をまきたい」と言うので、苗はあきらめました。

種をまいて、たっぷりの水をあげます。その次の日もたっぷりと水をあげます。ちょっと伸びてきた雑草を抜いて、また水をあげます。ただ、3日目は忙しくて水やりができませんでした。4日目も忙しく、5日目は水やりを忘れてしまい、気づけば草抜きも少し期間があいてしまいました。

そのあいだも雑草はぐんぐん伸びて、畑を覆っていきます。一面が雑草に染まっていきます。いま水をあげても雑草を大きくするだけ。なにをおいても雑草を抜く必要があります。

しかし抜いても抜いても、雑草はどんどん生えてきます。やがて草抜きが追いつかなくなってきて……。

家庭菜園をするなかで気づいた、純然たる事実

もちろん、しなければならないのは草抜きだけではありません。マルチを張ったほうがいいんじゃないか。追肥もそろそろしたほうがいいんじゃないか。芽が近くに2つ出ていたら、ひとつはとってもうひとつを生かして。支柱も立てなければ。もちろん水やりも必要です。あれもしなくちゃ、これもしなくちゃ。

そうこうしているうちに、僕はハタと気づきました。

「……これ、マメな性格のひとがやるやつだ!」

「家庭菜園をするうえで、絶対に欠かせないこと」。それはたったひとつ。「マメさ」だったのです。そう気づいて愕然としました。僕はマメなひとではなかったのです。

マメさのない人間の畑の末路

「このままでは、全滅させてしまう」

マメじゃない自分の心と身体にムチを打って、「本腰を入れて、家庭菜園に向き合おう」と決意を新たにするのですが、そんなときに限っていつも雨。畑に出られず、モチベーションが根こそぎ奪われてしまいます。

そのあいだも雑草は、人間をあざ笑うように伸びつづけます。やがてキュウリもトマトも雑草に埋まりはじめました。こんなにも、「家庭菜園とは雑草との戦いである」を体感するなんて。家庭菜園をはじめる前は、思いもしませんでした。

雑草が伸びていくと、さまざまな生きものが繁殖をはじめます。キュウリの葉は虫に食われ、畝のしたにヘビが住みつき、よくわからない虫が飛びまわります。ムスメは怖がって、ほとんど近づきません。ムスメだけではなく、僕も怖くなってますます近づけなくなっていきます。

もはや、どれがトマトのツルで、どれが雑草なのかもわかりません。
つい先日まで不毛な土地だったことがウソのよう。圧倒的な緑、緑、緑。雑草に覆われた畑をまえに、途方に暮れるしかありません。

憧れの家庭菜園はいつしか、絶望に変わっていました。

家庭菜園に必要なものは、マメさです。マメでなければ、雑草との戦いに敗北を喫することになります。そして敗北した畑は、手のつけようもないほど雑草に覆われ、「人間ってなんて無力なんだ」と思い知らされることになります。

僕も、そのひとりです。
そんなことを考えていると、惨憺たる畑の隅、ムスメの植えたマリーゴールドだけが満開の花を咲かせていました。聞くと、マリーゴールドは雑草に負けない強い花だそうです。

……後日談があります。
それから約2週間後、水はやらず、雑草ものび放題。そんな畑でも奥さんは定期的にチェックをしてくれていたようです。ある朝、言いました。
「トマトができてるよ」
奥さんの言うとおり、トマトができていたのです。小さなキュウリもできていました。

「放置していただけなのに……」
自然のチカラを感じずにはいられません。家庭菜園はほんとうに僕たちに、多くのことを教えてくれるものです。

雑草に抗いながら、なんとか育とうとするトマト

小さいながらも、キュウリも収穫できました。自然は本当に偉大です

(前回を読む)
第8回 憧れの家庭菜園、のはずだったのに。どうしてこうなるのか。

執筆者プロフィール

甲田智之(こうだ・ともゆき)

1984年生まれ。大阪府出身。京都精華大学卒業。一般企業の営業職を経て、ライター・編集者として独立。2016年に岡山県真庭市へ移住。元真庭市地域おこし協力隊。現在、広告代理店の株式会社はこらぼ取締役、地域づくりの一般社団法人コミュニティデザイン理事として、ローカルメディアや高校教育、コミュニティ創出に携わっている。また作家として小説の執筆、一般書籍や雑誌の編集、自分史の代筆などもしている。著書に『中村文昭という生き方 出会いを通して自分に出会う!!』(ごま書房新社)、原作付きノベライズ『レイワ怪談』シリーズ(学研プラス)などがある。

甲田智之

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