第8回 憧れの家庭菜園、のはずだったのに。どうしてこうなるのか。

手に入れた畑が、真っ白になった日

「家庭菜園が夢だったんです」
都会ではなかなか手に入らない広めの庭。その一角にあるのは、自分たちがせっせと育てたみずみずしくて、おいしい野菜たち。収穫の時期になったら、子どもたちと一緒にもぎって、その場で食べて。食卓には自分たちで育てた野菜がずらり。

「田舎暮らしって野菜を買わなくてもいいから、食費が助かっちゃうよね」

そんなお話が聞こえてきそうな、田舎の「家庭菜園」。かく言う僕も、移住してから夢の一軒家をなんとか手に入れ、合わせて裏庭に小さな畑を持つことができました。
「これで僕もようやく家庭菜園ができる!」
今回は、そんな家庭菜園のお話です。

家から畑までの距離、わずか5秒の好立地。(畑にはトイレ問題があって、家から近かったりトイレから近いことが望ましいんです。とくにお腹のゆるい僕は……)。作業後すぐにシャワーを浴びることもできます。

雑草がぼうぼう生えた土地を、見よう見まねで耕していきます。……ただ、このときすでに間違いは起こっていました。見よう見まねで始めるものではなかったのです。家庭菜園には「ある程度の知識」が必要でした。

きれいに耕した後、「酸性になっている土を、アルカリ性に傾けるべし。そうすることで野菜たちが元気に育ってくれる」と聞きかじった情報を持っていた僕。さっそく近くのホームセンターで苦土石灰20kgを購入しました。

苦土石灰(くどせっかい)とは、アルカリ性の肥料です。雨などで酸性に傾いた土を中和してくれる効果があります。

「野菜たちが大きく元気に育ちますように」
そんな願いをつぶやきながら、僕はせっせと畑に苦土石灰20kgをまきました。真っ白になっていく畑。どんどん白くなっていきます。

その様子を見ていた奥さんが言いました。
「……ちょっとまき過ぎじゃない?」
「ん?」
「畑、白くなり過ぎじゃない?」
「……」
たしかに、畑は真っ白。見たことのない光景が広がっていました。
「いや、耕せば馴染んでくるから」

そう言って、耕せど耕せど、真っ白な苦土石灰は土に馴染みません。圧倒的に白い畑のままです。……おかしい。そしてそのときはじめて僕は、スマホで調べることにしました。
結論から言えば、苦土石灰のまき過ぎでした。

裏庭。草を刈る前、まだ苦土石灰をまき過ぎることを知らない

裏庭。草を刈った後、このときもまだ苦土石灰をまき過ぎることを知らない

「知識」と「聞きかじった情報」の決定的な差

苦土石灰をまき過ぎて、アルカリ性と化した畑は――。
・野菜たちが、水や肥料を吸えなくなってしまう。
・ミネラル分が行きわたらず、野菜たちが育たない。
調べたところ、そのような検索結果でした。

「……終わった」
思わず天を見上げました。まわりは、真っ白な畑が広がるばかり。
裏庭に小さいながらも畑を持ち、家庭菜園を夢見ていた僕の「家庭菜園ライフ」は、初日に終了を迎えました。「お父さん、野菜をつくっちゃうぞ」と子どもたちに息巻いていた自分が恥ずかしい。泣きそうになりながら、僕は苦土石灰を畑から取りのぞいていきました。

アルカリ性に変わってしまった土を、また元の状態に戻すには「雨」で洗い流してもらうしかありません。農家さんが待ち望む「雨」とはまたちょっと違う意味で、僕は「雨」を待ち続けました。

やがて梅雨を迎え、雨が降り、「死の土地」と化していた畑に、少しずつ雑草が生えてきました。あのときほど、雑草の発育を喜んだことはありません。

「生き返った! 畑が生き返った!」

あまりに嬉しくて、僕はムスメを誘ってホームセンターへ「野菜の種」を買いに行きました。これでようやく、家庭菜園ライフを復活させることができる。心は浮き立っていました。この期に及んでもまだ、僕はイメージや聞きかじった情報だけで家庭菜園をしようと思っていました。

いえ、そういう意識すらなく、「わあい、畑だ。家庭菜園だあ」とただただ浮かれていただけのように思います。

多くの方が憧れているという田舎での家庭菜園。しかし畑をするには、ほんとに「ある程度の知識」が必要なのです。そのことに気づかなかった僕の「家庭菜園ライフ」はもう少し続きます。

(次回に続く)
第9回 家庭菜園をするうえで、絶対に欠かせないこととは。

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