料理研究家・川上文代が埼玉の魅力がつまった料理やお菓子をご紹介します!
素材の味を大切にした空家スイーツ
空き家の庭に実る果物を使ったお菓子で町を活性化
なんとも興味深い名前の「空家スイーツ」は、埼玉県内でも特に高齢化率が高い鳩山ニュータウン(比企郡鳩山町)の空き家等で穫れた果物を使用するロシアケーキです。愛知県のニュータウン出身で2017年に鳩山ニュータウンに移住した現代美術アーティストの菅沼朋香さんと、お菓子作家の山本蓮理さんが共同で開発し、商品化されました。
コンセプトは“庭のある生活の豊かさ”を伝えること。柚子や金柑、梅など、鳩山ニュータウンの空き家の庭に実る季節の果物を家の所有者から提供してもらい、添加物を使わずにジャムにします。そのジャムを地粉を使ったクッキー生地にたっぷりトッピングして焼き上げる素材の味を活かしたロシアケーキなのです。
クッキー生地はサクッとした食感が心地よく、地粉の風味が豊か。そこに自然の甘みや酸味が滋味深いジャムが相まってやさしい味わいに包まれます。現在、ジャムは全部で9種類。季節に合わせて3種類ずつ並ぶので食べ比べも楽しみです。お二人が丹精を込めた空家クッキーは「世界初!?」のニュータウン土産として、なんと発売から半年足らずで鳩山町のふるさと納税の返礼品になりました。
空家スイーツを商品化した菅沼朋香さん(右)と山本蓮理さん
空家スイーツが購入できるのは、鳩山ニュータウン内にある「鳩山町コミュニティ・マルシェ」と「ニュー喫茶 幻」です。私が訪問したニュー喫茶 幻は、朋香さんが元空き家の自宅の一室を改装してオープンした喫茶処で、アーティストならではのビビッドな空間。あちこちに朋香さんの作品が飾られていて、眺めているだけでも楽しいです。
また、ホームページから注文することもできます。鳩山ニュータウンが分譲された1970年代から90年代をテーマにデザインされた包装紙に、ピンクのラッピングリボンが懐かしさを醸す“レトロkawaii”パッケージで、お土産にも最適です。
果物などがかわいらしくあしらわれたパッケージ
私も料理研究家として何か提案できればと思い、「空家スイーツの進化版?」をお二人と一緒に研究しました。注文がたくさん入っても対応できるように、誰でも作りやすい配合や作業工程にして、さらに「空家スイーツ」の名前を連想させる少しデコラティブな家のかたちにしたものです。
これから、どのような形でより美味しいお菓子になっていくのか、私も今から楽しみです。
家とツリーの形が目を楽しませる“空家スイーツ進化版”
【空家スイーツ】
: https://www.akiyasweets.com/
*現在は3種類9個の詰め合わせを予約販売
川上文代(かわかみ・ふみよ)
料理研究家。辻調理師専門学校で12年間勤務後、デリス・ド・キュイエール川上文代料理教室主宰。新刊『フライパンで! 時短和食』(主婦の友社)、『イチバン親切な小麦粉料理の教科書』『新版 イチバン親切な料理の教科書』(ともに新星出版社)をはじめ、著書多数。
:https://www.delice-dc.com