長年の取材の中で出会った人やお店、名品など隠れた埼玉の魅力をお伝えします!
まもなく新茶の季節。埼玉県の特産である狭山茶づくりも最盛期を迎えます。狭山茶の主産地の入間市では、大西園製茶工場14代目の中島毅さんが全国初の「永世茶聖」に輝きました。
永世茶聖は全国手もみ茶振興会が主催する「全国手もみ茶品評会」で日本一を5回獲得し、かつ同振興会が認定する資格の最高位「茶匠(さしょう)」を有する人に与えられます。通常、茶匠は50歳以上でなければ得られないため、40代の中島さんの資格は一つ下の「師範」です。しかし、これまで品評会で8回もの日本一を獲得している実績や、手もみ茶づくりへの姿勢が考慮され、2020年11月に特例的に永世茶聖の称号を与えられました。
手もみ茶日本一の称号「永世茶聖」を持つ大西園製茶工場14代目の中島毅(つよし)さん(41歳)
五感をフル活用して手もみ茶をつくる
大西園製茶工場は江戸時代から250年以上に渡ってお茶づくりを続ける狭山茶農家です。中島さんは長男として家業を継ぐために高校卒業後、茶業の後継者・指導者を育成する静岡県の野菜・茶業試験場(現・農研機構果樹茶業研究部門「金谷茶業研究拠点」)に進みました。ここで日本茶づくりの基本である手もみ茶づくりを学びます。
やがて家業に入ると、毎年新茶づくりの最盛期となる前に、その年のお茶の出来を確認しながら自らの手で品評会に出品するための手もみ茶をつくりはじめます。
現在の日本茶は一般的に機械製茶のため、すべての工程を手でつくる手もみ茶は市場にはほとんど出回らない希少で高級なお茶です。しかし、中島さんは自分自身の五感をフル活用して手もみ茶をつくることで、その後につくる機械製茶にも良い影響を与えると言います。
左/手もみ茶は「焙炉(ほいろ)」という乾燥させるための熱い台の上で7~8時間もみ続けてつくる。右/中島さんがつくった手もみ茶
全国各地で技術を磨き日本一に
中島さんは手もみ茶づくりを始めて20年以上になります。品評会では出来上がったお茶の葉の形や香り、水色(お湯で浸出した時の色)などの項目で審査されます。たった1点を上げるために畑づくりから1年間の栽培管理、製茶の細部まで気を配る必要があります。
そこで、中島さんは全国各地のお茶の産地をめぐって達人たちに学び、技術に磨きをかけました。そうして日本一に輝くこと8回。さらに永世茶聖の称号まで獲得するも、中島さんは常に謙虚で、今回の称号授与においても「お茶を知り、好きになるきっかけにしてほしい」と話していました。
機械製茶が主流の今、手もみ茶づくりをしている若手は大変少なくなっています。中島さんは日本の伝統文化を受け継ぐために、今後は後進の育成にも携わっていきたいそうです。
入間市にある大西園製茶工場
【大西園製茶工場】
住所:埼玉県入間市根岸259
電話:04-2936-1620
:http://onishi-en.com/
*中島さんの手揉み茶は季節・数量限定で、大西園製茶工場で販売されています。
尾内あゆみ(おない・あゆみ)
1985年生まれ、所沢市出身、飯能市在住。高校卒業後、入間ケーブルテレビグループに入社し、14年にわたって入間市で取材・番組制作に携わる。2017年より毛呂山町にあるゆずの里ケーブルテレビへ。制作編成課課長として番組を制作。長年の取材で得た知識をもとに埼玉の魅力を掘り下げる“埼玉コンシェルジュ”。
:あゆなびチャンネル(YouTube)