学んで!埼玉

首都のベッドタウンと呼ばれながら、埼玉県には東京にのみ込まれない伝統と個性を持った学校が多くある。教育、社会運動を専門とし、各メディアで活躍するジャーナリスト・小林哲夫が「教育県」の素顔を探る。

第8回 県内の学校出身者から総理は生まれるか

小林哲夫

初当選の2世議員か、たたき上げか

 埼玉県選出の国会議員で、地元の学校で教育を受けた者はどのくらいいるだろうか。2021年10月末の衆議院議員選挙で当選した国会議員を調べてみた。出生地、小中学校、高校、大学、勤務先すべて埼玉県という人はいない。

 大学以外、ほぼ県内で過ごしたのは三ツ林裕巳さん(14区、自民党)がいる。幸手市生まれ。幸手市立幸手中学校、県立春日部高校、日本大医学部を経て、同大付属病院で医師となった。その後、春日部市、志木市内の病院で地域医療に尽くした。

 山口晋さん(10区、自民党)は今回、初当選である。当選時38歳と県内最年少議員で、父親の後を継いだ2世議員だ。川島町立中山小学校、西武学園文理中学高校、成城大、一橋大大学院を経て、東京ガスに入社した。

 17年に同社を退社後、菅義偉事務所で政治家修業を積んでいた。「入間川流域や荒川等の治水対策を強力に推進」をアピールする。

 ほかに大学県外組で、坂本祐之輔さん(10区、立憲民主党)がいる。東松山市立松山中学校、県立松山高校、日本大に通っていた。東松山市議会議員、東松山市長という経歴だ。

 森田俊和さん(12区、立憲民主党)は、熊谷市立玉井中学校、県立熊谷高校、早稲田大の出身で、埼玉県議会議員を2期務めた。横浜市議会議員出身の菅前首相にならえば、坂本さん、森田さんは埼玉の「たたき上げ」ということになる。

官僚出身エリートや落下傘候補も

 高校県外組には、穂坂泰さん(4区、自民党)がいる。志木市立宗岡第二中学校、青山学院高等部、青山学院大の出身だ。土屋品子さん(13区、自民党)は浦和市立岸中学校、共立女子高校、聖心女子大に通っていた。父は土屋義彦元埼玉県知事で、地元の政治を見て育った。

 中学県外組には、官僚出身のエリートがいる。村井英樹さん(1区、自民党)はさいたま市立浦和別所小学校、海城中学高校、東京大を経て03年、財務省に入った。ハーバード大留学経験がある。11年に退官し、翌年自民党の公募に応じて立候補し、初当選を果たした。

 柴山昌彦さん(8区、自民党)も公募によって政界に進出した。狭山市立狭山台南小学校(現・狭山台小学校)から都内の武蔵中学高校に進む。東京大法学部を経て住友不動産勤務後、弁護士となった。2018年に文部科学大臣に就任する。

 一方、県内で教育を受けたり、仕事をした経験がまったくない議員がいる。立憲民主党前代表の枝野幸男さん(5区)は、栃木県宇都宮市生まれで、県立宇都宮高校から東北大に進んだ。卒業後は弁護士となり、東京の法律事務所で働いている。

 1993年、日本新党(当時)による国会議員候補者の公募に応募したのがきっかけで政治家となった。縁もゆかりもない埼玉からの選出は、党に割り当てられたことによる。落下傘候補だ。

 埼玉で教育を受けた者が総理になるだろうか。与党では大臣、派閥の領袖や幹部など大物がおらず、小粒感が否めない。時間がかかりそうだ。野党はもっと厳しい。政権交代の可能性は低くなり、立憲民主党新執行部に埼玉の関係者はいない。さびしい。

執筆者プロフィール

小林哲夫(こばやし・てつお)

教育ジャーナリスト。教育、社会問題を総合誌などに執筆。新刊『「旧制第一中学」の面目 全国47高校を秘蔵データで読む』(NHK出版)のほか、『平成・令和 学生たちの社会運動 SEALDs、民青、過激派、独自グループ』(光文社新書)、『神童は大人になってどうなったのか』(朝日文庫)、『学校制服とは何か その歴史と思想』(朝日新書)など著書多数。

小林哲夫

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