学んで!埼玉

首都のベッドタウンと呼ばれながら、埼玉県には東京にのみ込まれない伝統と個性を持った学校が多くある。教育、社会運動を専門とし、各メディアで活躍するジャーナリスト・小林哲夫が「教育県」の素顔を探る。

第9回 「生きた教育」の発信場所としての学校

小林哲夫

ウクライナ情勢に対する大学の姿勢を見る

 ロシアのウクライナ侵攻について、聖学院大(上尾市)の清水正之学長が次のような声明を出した。

「聖学院大学を代表して、ロシアによるウクライナ侵攻を強く非難するとともに、ロシアが即座に軍事行動を停止し、ウクライナから全ての兵を撤退させることを求めます。(中略)ウクライナおよび他の場所で不当な暴力に晒されている人々や不当な影響を被っている人々への連帯を示し、そのような人々を保護するために必要な支援を行います」(2022年3月2日、大学ウェブサイト)

 聖学院大はキリスト教系大学である。こうしたミッションスクールは平和を求める建学の精神・理念を掲げ、今回、学長声明でロシアを非難した大学がいくつかあった。酪農学園大、東北学院大、立教大、フェリス女学院大、関西学院大などである。

 埼玉県内の他大学はどうだったか。埼玉大はウクライナの大学(V.G.コロレンコ記念ポルタワ国立教育大)と協定を結んでいる。大学ウェブサイトには「オンライン学生セミナーを開催するなど、(中略)具体的な交流が進んでいます。今回の学術交流協定締結を契機に、同大学との研究交流・学生交流が全学的にますます活発になることが期待されます」(21年6月)とある。

 残念ながら、埼玉大の学長は何も発言していない。ウクライナの大学教職員、学生を案じる談話を発表してほしかった。国立大学でも北海道大、東京大、九州大はウクライナ支援の声明を出しているのだから。

 獨協大(草加市)はウクライナへの支援を打ち出している。

「昨今の危機的情勢により、安全な生活と学習の環境を失ったウクライナ学生を、獨協大学は人道的見地から一時的に受け入れ、学習継続の機会を提供し、併せて各種支援を行うこととしました」(22年5月11日、大学ウェブサイト)

写真:photoAC

平和を願って活動する学生も

 学生がアクションを起こした短大がある。国際学院埼玉短期大(さいたま市)は卒業式当日、ウクライナへの支援を訴えた。

「ウクライナに関する報道を見るたび心が痛みました。なにか私たちにできることはないだろうか、と検討し、卒業式当日に会場に募金箱を設置、出席した私たち・保護者の皆様、教職員にウクライナ支援を呼びかけました」(22年3月18日、短大ウェブサイト)

 高校生も動いた。大宮開成高校インターアクト部の生徒数人が3月下旬、大宮駅東口でウクライナ国民などへの人道支援を目的とした募金活動をを行っている。

 中学生も黙っていなかった。ふじみ野市立葦原中学校の生徒が千羽鶴を同市役所に飾り、平和を訴えた。地元紙が伝える。

〈同校2年1組の生徒ら数人が「私たちの思いを聞いてください」と校長室のドアをたたいた。生徒らは「テレビから流れてくるウクライナの人たちが涙ながらに平和を訴える姿を見て、何か自分にできることはないか、と強く思い、クラスの仲間と訪れました」と訴えた〉(『埼玉新聞』同年3月21日付)。

 教育機関、生徒や学生が平和を求める言動を歓迎したい。社会に目を向け、他国への武力侵攻はダメだと発信する。こうした意志表示は教育によって身につくべきものだから。

執筆者プロフィール

小林哲夫(こばやし・てつお)

教育ジャーナリスト。教育、社会問題を総合誌などに執筆。新刊『「旧制第一中学」の面目 全国47高校を秘蔵データで読む』(NHK出版)のほか、『平成・令和 学生たちの社会運動 SEALDs、民青、過激派、独自グループ』(光文社新書)、『神童は大人になってどうなったのか』(朝日文庫)、『学校制服とは何か その歴史と思想』(朝日新書)など著書多数。

小林哲夫

投稿順 新着順