必殺! 埼玉県共助仕掛人シリーズ
共に支え合う豊かな地域づくりを目指して

くらし 必殺! 埼玉県共助仕掛人シリーズ

 埼玉県は、地域の人々が共に支え合えるよう、市民活動団体やNPO法人、企業等をマッチングし、活力ある地域づくりを推進しています。現在31名の共助仕掛人が県に登録され、各地で活動をしています。みなさん本業の傍ら、自治会、NPO、企業、学校、などとの連携をお手伝いする市民活動のコーディネーターです。このコーナーでは共助仕掛人のみなさんにリレー式にそれぞれの活動を発信してもらいます。

共助仕掛人の紹介

児童養護施設出身の若者に振袖、晴れ着を着てもらい、川越の蔵造りの街並みをパレード。黒留姿はNPO法人「川越きもの散歩」の会員 画像提供:WEBサイト「前橋・川越・横浜 絹のものがたり」

第1回 きもので川越のまちづくり。
NPO法人 川越きもの散歩の藤井美登利さん

 はじめまして。川越市で「きものでまちづくり」に取り組むNPO法人「川越きもの散歩」を主宰している藤井美登利と申します。よろしくお願いいたします。

 突然ですが、みなさんは最後にきものを着たのはいつですか? 成人式か結婚式か、はたまた今年のお正月でしょうか。もしかすると、ご実家のタンスにきものが眠っていたりはしませんか。日本人のタンスの中に眠っているきものの総額は30兆円! そんな驚くニュースも最近耳にしました。

 川越きもの散歩は、きものをみぢかな暮らしの中に取り戻し、次の世代に伝えることを目的としています。今回は、その活動の一端を紹介します。

 川越では近年、川越氷川神社の「縁むすび風鈴」と「かざぐるま」が夏の風物詩として定着し、都内から浴衣姿の若者がたくさん訪れるようになりました。それに合わせるかのようにレンタルきもの店も増え、明治時代の街並みにきもの姿が似合うまちとして、紹介されることも多くなりました。きもの姿は川越では日常の景色になりつつあります。

「風の便り」というように風は人の想いを運ぶもの。川越氷川神社の風鈴もかざぐるまも目に見えない風を私たちに感じさせてくれる

きもの姿の若者が行き交う川越のまち

きものでまちづくり~毎月28日の「川越きもの散歩」

 行政と市民、商店街が連携して「きものでまちづくり」を進めているのも川越のユニークなところです。川越市は毎月8のつく日を「川越きものの日」と制定し、この日にきもので川越を訪れると川越市立美術館や博物館、川越まつり会館などの市の施設の入館料を2割引きにしています。また小江戸川越観光協会が事務局となり、市内約200の店舗がきもの優待割引を行います。

 私達も毎月28日の成田山川越別院の蚤の市に合わせて、「川越きもの散歩」を開催! 本堂階段の前に午前11時に集合し、境内の市で掘り出し物のきものを探したり、一緒にランチをするゆるーい集まりです。

 ランチのあとは、ガイドブックにはない川越の裏町をお散歩します。1910(明治43)年に建てられた川越織物市場がマンション建築で壊されそうになったときには、みんなで保存を求めるイベントにきもので押しかけました。その甲斐があってか(!?)、保存運動は成功し、織物市場は復元工事が行われています。きものビギナーの方やきもの仲間を作りたい方、ぜひ「川越きもの散歩」にお気軽にご参加ください。

毎月28日に催される成田山川越別院の蚤の市にて

市民が署名活動を行い保存が決まった川越織物市場。1963(昭和38)年公開の三國連太郎主演の映画『無法松の一生』のロケ地にもなった

川越のまちなみと木綿の普段着「川越唐桟」

 川越は江戸時代から織物の産地でした。幕末から明治にかけては、「川越唐桟(かわごえとうざん)」という木綿の織物が江戸で大評判になります。横浜(神奈川県)に絹を売りに行った川越の織物商が英国製の細い紡績糸を見つけ、その糸で反物を織らせたのが「川越唐桟」です。木綿なのに絹のような光沢があり、値段も手頃なことが人気の理由。英国の産業革命で作られた紡績糸が、アジアの端の日本に届き、川越商人を富ませたのです。今に残る明治時代の蔵造りの建物の多くは、当時の織物買い継ぎ商が建てたものです。

 川越唐桟はその後、機械化に乗り遅れて一度は途絶えましたが、昭和の後半に市民や織元が復活させて、今も市内の2軒の呉服店で購入することができます。また、オンラインショップ「小江戸○○屋(こえどまるまるや)」でも取り扱っています。名刺入れやストールなどの小物も人気です。

明治期に建てられた蔵造りの商家

川越唐桟の反物とストール(右下) 画像提供:小江戸〇〇屋

きものを次世代に伝えたい~親子きもの体験

 かつて、きものの着付けは家庭で母から娘に伝えられてきました。しかし、そんな時代はいつのことやら。今はインターネットが着付けの先生です。私達は子育てで日々忙しいママたちにお子さんと一緒に普段着のきものを体験してもらいたくて、NPO法人「川越子育てネットワーク」と連携して「親子きもの体験」を開催しています。

 あっという間に大きくなってしまうこどもたちの普段着のきもの姿も可愛いものです。ママたちもきものをまとうことで非日常を味わい、気分転換になるようで毎回好評の企画です。

きもの姿で記念撮影。いつも笑顔にあふれる親子きもの体験

前橋・川越・横浜 絹のものがたり

 新型コロナ感染拡大の前は、年間700万人の観光客を迎えていた川越。今後は遠くからたくさんの人を迎える観光のかたちが変わっていくことでしょう。情勢に気をつけながらも活気あるまちを取り戻していくため、小江戸川越観光協会の主催でポスタープロジェクト「越えていこう、川越」が実施されました。コロナ禍をのりこえていくためのメッセージを込めた1000のポスターをまちなかに掲示するプロジェクトで、私達も参加しています。

 群馬、埼玉にかつてあった日本のシルクロード「絹のみち」は終着点の横浜へと続くみちでした。そこで、「きもの・絹」をテーマに、川越、前橋(群馬県)、横浜の市民団体がつながるWEBサイト「前橋・川越・横浜 絹のものがたり」(埼玉県NPO基金助成事業)を作成しました。英国人きもの研究家のシーラ・クリフさんが独自の視点で3つのまちやひと、歴史を紹介しています。

 身近な地域のちょっと昔を掘り起こすと、「絹」にまつわる面白い話が眠っています。みなさんの地域の絹の話もぜひこのWEBサイトにご投稿ください。そしてコロナが落ち着いたら、3つのまちで「きもの散歩」を開催できることを楽しみにしています。

川越のまちを歩くシーラ・クリフさん

シーラ・クリフさん(左から2人目)と前橋で活動している造形作家のMac Nakataさん(左)。「埼玉きものサミット」会場にて

「越えていこう、川越」のポスター。NPO法人「川越きもの
散歩」の理事のメンバー、ミセスの正装「黒留袖」で

【次回予告】

  • 次回は寄居町在住、NPO法人 小川町創り文化プロジェクトの理事・平山友子さんです。

NPO法人 川越きもの散歩
https://kawagoe-kimono.jimdofree.com

縁むすび風鈴(川越氷川神社)
http://www.hikawa-fuurin.jp

前橋・川越・横浜 絹のものがたり
https://silk-story.jimdofree.com

執筆者プロフィール

藤井美登利(ふじい・みどり)

NPO法人 川越きもの散歩代表、東京国際大学非常勤講師(観光ガイド実習)。観光で訪れた川越を気に入り、東京より移住。川越の町雑誌「小江戸ものがたり」編集発行人。エリック・クラプトンに会いたくて英国航空客室乗務員として10年勤務。夢が叶ってクラプトンに機内でウォッカコークをサービスし、酔いつぶれたギターの神様に毛布をかける。また、新婚旅行中の忌野清志郎を機内で見つけてシャンペンをプレゼント。「きものとロック」をテーマに埼玉WABI SABI大祭典「きものサミット」などを企画。埼玉県共助仕掛人として6年間埼玉県庁に勤務し、企業、行政と市民活動のマッチングを行う。著書に『埼玉きもの散歩―絹の記憶と手仕事を訪ねて』(さきたま出版会)

藤井美登利


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