第1回 浦和一女、熊谷女子に夜明けはくるか

小林哲夫 教育

学んで!埼玉

首都のベッドタウンと呼ばれながら、埼玉県には東京にのみ込まれない伝統と個性を持った学校が多くある。教育、社会運動を専門とし、各メディアで活躍するジャーナリストが「教育県」の素顔を探る。

文=小林哲夫( 教育ジャーナリスト)

男女共学化反対の歴史

 埼玉県内公立高校のルーツ、旧制中学は古い順にナンバースクールとして校名が付けられていた(カッコ内は開校年)。一中=浦和高校(1895年)、二中=熊谷高校(同)、三中=川越高校(1899年)、四中=春日部高校(同)。なお、五中以降は作られず、所在地名が冠せられた。

 1948年、一中から四中は新制高校としてスタートしたが、いずれも男子校だった(ほかに旧制中学ルーツの松山高校なども男子のみ)。戦後、GHQ(連合国軍総司令部)地方軍政部は占領下における日本の教育政策として男女共学を求めるものの、埼玉県教育委員会(県教委)と高校がこれに逆らったからである。旧制の高等女学校も新制高校に移行された際、浦和第一女子(浦和一女)、熊谷女子、川越女子、春日部女子など女子校として存続している。

 公立高校の男女別学は宮城、福島、栃木、群馬でも見られた。その理由として「伝統を守る」「共学は風紀が乱れる」などあまり合理性のないものだった。「女子(男子)トイレを造る予算がない」という言い訳もあった。

 2000年代に入って、県教委で男女共学化の議論が起こっている。これに強硬に反対したのが、浦和、浦和一女の生徒、保護者だった。彼らが中心となり、県内公立別学高校11校の生徒会長が土屋義彦知事(当時)に共学化反対署名27万人分を突きつけている。県教委はこれにビビってしまい、共学化話は立ち消えになった。

校名変更が共学化の障壁に

 さて、2020年代である。伝統を守ると言ってはいられない現実に直面している。少子化だ。県教委は、29年までに県立高校(全日制)を現在の134校から10~13校減らす統合再編計画を進めている。生徒減少分は、いま定員割れの学校を淘汰することで対応する。男女別学校は統合再編されはしないが、共学化して男女が入りやすくする計画を考えている。

 そうなった場合、悩ましいのが、校名である。たとえば、川越はそのままでいいが、川越女子は「女子」を外さなければならない。これには先行事例がある。2000年代に共学化した宮城、福島だ。おもな校名変更は次のとおり。

〈宮城〉第一女子→宮城第一、第二女子→仙台二華、第三女子→仙台三桜、古川女子→古川黎明
〈福島〉磐城女子→磐城桜が丘、会津女子→葵、安積女子→安積黎明、福島女子→橘

 はやりの校名は「黎明」、つまり、夜明け、らしい。

 浦和一女が共学化して浦和黎明になったら、同校OGは怒るだろう。熊谷女子、川越女子、春日部女子が共学化に強く反対する理由のなかにはホンネの部分として、優秀な女子が浦和、熊谷、川越、春日部に流れてしまい、「地盤沈下する」という危機感がある。

 一方で共学志向が強まり、公立女子校が人気薄になるかもしれない。伝統にこだわるより、共学として新しい学校に生まれ変わったほうが、夜明けはおとずれる。そんな気がする。その際のネーミングはかっこよく愛されるものをつけてほしい。

教室
執筆者プロフィール

小林哲夫(こばやし・てつお)
教育ジャーナリスト。教育、社会問題を総合誌などに執筆。新刊の『学校制服とは何か その歴史と思想』(朝日新書)、『大学とオリンピック 1912-2020 歴代代表の出身大学ランキング』(中公新書ラクレ)をはじめ著書多数
小林哲夫


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