第2回 私の人生を変えた「比企起業塾」との出会い

風間崇志

ときがわSTYLE

東京から90分という距離にありながら、自然豊かな埼玉県比企郡ときがわ町には自ら仕事を創りたいと考える若者たちが集まってくる。そんな町の「人」と「仕事」を巡る物語―—。

文=風間崇志

“地域でミニ起業”という生き方を知って

 ときがわ町のインキュベート機能を語るうえで、まず取り上げなくてはならないのは「比企起業塾」である。なぜなら、比企起業塾への参加こそ、私とときがわ町との関わりの原点であり、私の人生の大きな転換点になったからである。

 私は2020年3月に、14年間勤めた越谷市役所を退職した。理由はいくつかある。一つ目は通勤時間。往復3時間近くかかる通勤が、心身ともに大きなストレスとなっていた。二つ目は、妻の第2子妊娠。通勤時間のこともあって子どもとの時間が十分にとれない状況にあり、二人目が生まれればさらに妻の負担が増してしまう。三つ目は、やりがいを感じていた部署から別の部署に人事異動があったこと。仕事を“ジブンゴト”に感じることができなくなっていた。

 抱えていたモヤモヤが大きくなっていた頃に出会ったのが、「ときがわカンパニー」だ。同社は、町の起業支援施設「ioffice」を拠点として、地域で自らの仕事を創る起業家の育成に取り組んでいる。

 iofficeに集う人たちは、多くが起業家または起業希望者だ。起業家といっても、「資金調達●億円」というような、いわゆる大きなスタートアップ企業ではなく、地域に根を張って小さくても長く続けることのできる「ミニ起業家」たちである。こんな生き方、こんな起業の仕方があるのか……。パッと視界が開けた気がした。

比企起業塾の活動報告会に集まったミニ起業家の人たち

比企起業塾の活動報告会に集まったミニ起業家の人たち

人と人の掛け合わせから仕事が生まれる

 その出会いから約2カ月後、私は、比企起業塾の2期生になっていた。
比企起業塾は、ときがわカンパニーが主宰する地域のミニ起業家育成のための学びの場である。1期につき最大6名という少人数制で行っているため、同期の塾生はもちろん、講師陣や先輩塾生とも濃密なコミュニケーションが生まれる。 

“ときがわ町に、人が集まり、仕事がうまれる” 

 これは、ときがわカンパニーのビジョンであるが、比企起業塾は、まさにその言葉が体現される場だ。人と人とがつながり、またその人を通して人とつながる。自分で仕事を創るのはもちろん、人と人との掛け合わせからも仕事が生まれていく。しかも自由な発想で、楽しい仕事が、連続的に、である。これらは、単なる経済活動としての仕事というだけでない、ジブンゴトとしての「しごと」である。

 ある先輩起業家の言葉が忘れられない。

「会社員には戻れないよね。この楽しさを知っちゃうと」

 ミニ起業家は人を雇わないことが基本となる。その分、なんでも一人でやらなければならないのだが、不思議と孤独感はない。それは、比企起業塾生をはじめとして、ときがわ町に多数いるミニ起業家たちとつながっていると感じるからかもしれない。

 実は、本連載と並行して、ときがわ町で「しごとをつくる人」に焦点を当てた『地域でしごと まちづくり試論 -ときがわカンパニー物語』(通称、「ときがわ本」)を執筆中だ。本書では、主に比企起業塾生を中心に紹介しているが、まだまだほかにも取り上げたい面白い人たちがいる。そこで、本連載をこの本の姉妹編として、「ときがわ本」で紹介しきれない「しごとをつくる人」たちに焦点を当てていくことにしたい。

執筆者プロフィール

風間崇志(かざま・たかし)
1981年生まれ、埼玉県草加市出身。妻、一姫二太郎の4人家族。2006年、まちづくりを志し、越谷市役所に入庁。農業や商工業、伝統工芸振興、企業誘致などに携わり、多くの新規事業を手がける。
18年に比企起業塾の第2期を受講し、20年に個人事業主として起業。屋号は「まなびしごとLAB」。埼玉県比企郡や坂戸市を中心に、行政や中小企業のお助けマンとして、企業支援や地域活性化、地域教育、関係人口づくり、ローカルメディアづくりなどに取り組む“まちづくりすと”。
https://www.manabi-shigotolab.com/

風間崇志


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