最終回 地元、飯能の祭囃子を動画配信 邦楽囃子方・石森裕也さん

埼玉コンシェルジュ 尾内あゆみレポート

長年の取材の中で出会った人やお店、名品など隠れた埼玉の魅力をお伝えします!

 コロナ禍でおまつりができなくなり、お囃子の音色を聞くこともすっかりなくなってしまいました。今回は、幼い頃からお囃子に魅了され、その魅力を届け続けるプロの邦楽囃子方である石森裕也さんにお話をうかがいました。

邦楽囃子方 石森裕也さん
1989年、埼玉県飯能市生まれ。東京藝術大学・大学院を修了後、邦楽囃子の研究に努める。近年は獅子舞や神楽の公演、小・中学校で芸術鑑賞会を行うなど様々な活動をしている

テーマパークよりお囃子が好きだった

 石森さんは飯能市で生まれ育ちました。地域のおまつりに行くと夜に輝くちょうちん、踊り、お面などが好きで、山車の上で演奏されるお囃子の様子をいつまでも見ているような子どもでした。何かを買ってとせがむわけでもなく、テーマパークに連れて行ってと言うわけでもない。ただただ、僕もお囃子の笛や太鼓を演奏してみたい、あんなふうに音色に合わせて踊りたいと思っていました。

 はじめは踊りやお囃子自体が好きだった石森さんでしたが、小児喘息で肺が弱かったため、母に勧められて笛を始めることにしました。なかなか音が鳴らないのが悔しくて、一生懸命練習するうちにだんだんと音が出るようになりました。

 笛がおもしろくなり、もっと勉強しようと東京藝術大学の音楽学部邦楽科に進みました。その後は笛をメインに太鼓など鳴り物を演奏する邦楽囃子・笛方として、様々なコンサートや舞台、お神楽、おまつりなどで活躍しています。

YouTubeでお囃子の魅力を発信

 新型コロナウイルスの影響で、多くのおまつりが中止になっていることを悲しんでいるのは石森さんも同じです。これまでお客さんの前で生演奏を届けることにこだわってきましたが、そうも言っていられないくらいお囃子の音色を聞く機会も、演奏する機会もなくなってしまいました。

 まわりに勧められたこともあって、少しでもお囃子の音色とその魅力を届けようと昨年にはYouTubeで「邦楽囃子 石森社中」チャンネルを立ち上げました。特に、一人ですべてのお囃子の役を担当して多重録画をした飯能地方の祭囃子演奏シリーズの反響が大きいそうです。

「邦楽囃子 石森社中」チャンネル

 石森さんは小学校低学年の頃から地元の囃子連に所属しているほか、現在はイベントに呼ばれて演奏したり、草加市と越谷市でカルチャースクールや個人レッスンを開いて篠笛を教えたりしています。

 また、『軍師官兵衛』や『麒麟がくる』などのNHK大河ドラマにも出演しています。今後は自分のCDを出したいと思っているそうで、その時は地元の飯能でCD発売記念コンサートができたら嬉しいと語ってくれました。全国各地にお囃子の音色が響く日が早く戻ってくるといいですね。

邦楽囃子方・石森裕也さんのインタビュー動画を見る

:邦楽囃子 石森社中(YouTube)

執筆者プロフィール


尾内あゆみ(おない・あゆみ)
1985年生まれ、所沢市出身、飯能市在住。高校卒業後、入間ケーブルテレビグループに入社し、14年にわたって入間市で取材・番組制作に携わる。2017年より毛呂山町にあるゆずの里ケーブルテレビへ。制作編成課課長として番組を制作。長年の取材で得た知識をもとに埼玉の魅力を掘り下げる“埼玉コンシェルジュ”。
あゆなびチャンネル(YouTube)

尾内あゆみ
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