トカイナカから掘り起こした物語、眠っていた鉱脈、やっと出会えた人、
長い間のラプソディ。そんな宝物を折々に綴ります。
トカイナカからの贈り物――。
川越市、「市版SDGs調査2020」で日本一に輝く! 埼玉トカイナカの川越市が金沢、札幌等を凌駕した。その理由は何なのか? 選出した「ブランド総合研究所」の代表取締役社長・田中章雄氏が、「地域ブランド調査」などを行ってきた経験を踏まえて語る。
「川越は埼玉の誇り」という意識を持とう
今回の調査は中核市+政令指定都市+都道府県庁所在市、計83都市が対象です。各都市平均160人、総計1万3000人を対象にプレ調査を2回、インターネットで集計しました。ちなみに東京都23区は対象外です。住民の帰属意識が低いので。
調査項目は106、その中の「幸福度」「満足度」「愛着度」「定住意欲度」の四つがメイン項目で、幸福度の質問は一つだけ。「あなたは幸せですか?」。答えにはいろいろな理由があるだろうけれど、幸せかどうかを5段階評価してもらう。そういうシンプルな質問がこの調査にはいいのです。
その結果、川越市は「幸福度」が全国1位。「満足度」4位、「愛着度」10位、「定住意欲度」13位。どれも高い結果です。中でも「幸福度」は住民の39.1%が「とても幸せ」、32.3%が「少し幸せ」、計7割以上が「幸せ」と言っている。
ブランド総合研究所 社長 田中章雄氏
1959年生まれ、福井県出身。東京工業大学卒業。日経BPコンサルティング調査部長などを経て2005年にブランド総合研究所設立。地域ブランドアドバイザー、コンサルティングなどを務める
83都市の平均値は両方で62%ですからかなり高い。年齢的には20代、30代、60代が高い。主婦の満足度がめちゃくちゃ高く、子どものいる人が高い。市長が言う待機児童の取り組み等が評価されているのではないでしょうか。
蔵造りの商家が軒を連ねる川越は「小江戸」と親しまれている(写真=北村 崇)
ただし外から見た市町村の魅力度では、川越市は136位(1000自治体中)。決して高くない。つまり今後の川越市の課題は、「住民からの評価が高い」ことをもっと武器にしてブランディングするべき。「川越のどこがいいの?」と調査して長所をPR、外の人もそれを味わえるようにすること。「川越の誇り」を周辺エリアも共有すること。
いまはさいたま市の人は川越を誇りに思っていない人も少なくない。東武東上線、西武鉄道エリアの人は池袋には接点は持つけれど川越にはあまり接点を持とうとしない。もったいない!「川越は埼玉の誇りだ!」という意識が広まれば埼玉県としてのイメージアップに繋がります。
ちなみに埼玉県全体では「幸福度」は47都道府県中29位、「愛着度」は47位の最下位!これは大問題です。川越の魅力を埼玉県は使い切れていない。非常にバランスが悪い。長瀞、秩父、川越等の観光地も「点」でしかなくて「線や面」になっていない。もっと観光客が回遊するような「物語」をつくらないと!
たとえばドイツのロマンチック街道では、隣町を褒めあう文化があります。そういう風に地域がお互いを高めあう「物語」を持つこと。それが今後の川越と埼玉の課題ですね。
【ブランド総合研究所】 :http://www.tiiki.jp/
市版SDGs調査2020の調査結果概要
執筆者プロフィール
神山典士(こうやま・のりお)
ノンフィクション作家、埼玉トカイナカ構想代表。1960年生まれ、埼玉県出身。入間市立豊岡小・豊岡中、埼玉県立川越高校卒業。ときがわ町トカイナカハウスでの生活を満喫中。美味しいうどんや野菜、懐かしき昭和テイストの温泉、移住者たちとの交流、あとは地元の皆さんとの交流を画策しています。著書に『成功する里山ビジネス ダウンシフトという選択』(角川新書)など多数。