「下り列車に乗った国づくり」を目指して ~静かな革命進行中

2年目を迎えるトカイナカ構想

「この家はなんですか?」

 埼玉県美里町の町会議員さんたちに呼ばれ、「うちの町でも都会から人がやってくるような『トカイナカ構想』をやってくんねぇか?」と相談を受けていた時のこと。同町と寄居町の間にある円良田湖のほとりの丘の上に、風格あるたたずまいの空き家別荘に目がとまった。私が尋ねると、驚く答えが!

「三島由紀夫の奥さんが晩年に住んだ別荘です」

 なにっ!!そんなお宝がこの田舎町に眠っているの?今までなにも使わなかったのですか?「こんなぼろ別荘、なんに使うのよ?」と町会議長の橋場さんは私の顔を不思議そうに見た。

「なに言ってるんですか?この別荘の歴史と由来を調べるツアーを組んで参加者を募集しましょう。文学好き、三島好きにはたまらない案件です。その人たちに美里町のファンになってもらって関係人口、交流人口を獲得していきましょう」

美里町円良田湖のほとりに佇む三島由紀夫夫人の別荘

 私が言うと、橋場さんはこう言った。「地元に住んでいるとそんな発想は湧きません。私たちからしたらただの汚い建物です。でも都会の人には魅力がある。その物語で人を引きつけるという試み。やってみるしかない」

ときがわ町役場広場で月に一度開かれる本の町ときがわ

 振り返ればこの国は、明治維新以降150年間、「上り列車に乗らないと幸せになれない」国づくりを進めてきた。進学、就職するなら都会へ。税金、住宅ローン、保険も全て一度、お金は中央に集まり、そこからシャワー効果で地方に降り注がれた。

 ところが、一般的な勤労世帯の「経済的豊かさ」に関する直近の調査によれば、所得から必要経費などを引いた額で東京は最下位。所得は多いが、高い家賃や食費、通勤時間の長さから生活に余裕はない。「マイナビ」による2022年度就職予定者への調査では、希望する勤務地は、「地方」48.2%、「東京以外の都会」32%、「東京」19.7%。若者たちの東京離れが進んでいる。

「この先の日本は東京一極集中ではなく『分散型社会』になれば──」と、東京・有楽町にある「ふるさと回帰支援センター」の高橋公理事長は言う。

ときがわ町農家民宿、金子勝彦さん阿部由佳さん

 それにしても、ぼくたちは高度成長からバブル、その後の低迷と戦後75年の中で、酷い国をつくったものだ。「借金1000兆円(年間国家予算の10倍!)」「人口6000~8000万人に向けての人口減少」「地方の甚だしい疲弊」などなど。想像を絶する国を次代の若者に残そうとしている。せめて「下り列車に乗った幸せ探し」ができる国にしておくことが、次代への償いになるのではないか?人材も金も地方に向かい、その課題解決を「仕事」とする国に。

 そう念じて始めたトカイナカ構想も2年目に入ります。美里町や長瀞町でもトカイナカ構想のアクションが始まり、3月12日にはときがわ町で初代地方創生相・石破茂氏の講演会とパネルディスカッション。同日午後にはベーゼンドルファーコンサート。某民間鉄道会社とのジョイント構想も進んでいます。

ときがわ町在住トランペッター織田准一さん。3月12日、同町ベーゼンドルファーの会主催コンサートで演奏する

 埼玉トカイナカの魅力発掘発信のために。トカイナカ構想へのご支援をよろしくお願いいたします。

トカイナカハウス
〒355-0354 埼玉県比企郡ときがわ町番匠445
(八高線明覚駅徒歩5分)

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