長年の取材の中で出会った人やお店、名品など隠れた埼玉の魅力をお伝えします！
大相撲初場所で追手風部屋の西前頭筆頭・大栄翔（本名＝高西勇人、27歳）が初優勝を遂げました。追手風部屋で初、さらに埼玉県出身の力士が優勝したのも初めてのこととあって地元埼玉が喜びにわいています。
大栄翔は埼玉県朝霞市出身で、埼玉栄高校から草加市に拠点を置く追手風部屋に入門した生粋の埼玉っ子。中学時代には入間市市民体育館横の土俵で活動する「入間少年相撲クラブ」の稽古に混ざって相撲の基礎を学びました。厳しくも愛のある稽古で大栄翔を指導した入間少年相撲クラブの総監督である西澤正夫さんにお話を伺いました。
「頑張り」では歴代トップクラスの教え子
──大栄翔が初優勝を遂げました。感想をお聞かせください。
西澤さん（以下、敬称略）：小学校の頃から親しくさせてもらっている仲なので、今回の快挙は信じられないくらいうれしいです。大栄翔と付き合ってきて「あの勇人がここまで上り詰めたのか」と。当時の努力も知っているのでとにかくうれしいという言葉に尽きます。
──本人からの連絡はありましたか？
西澤：今場所の中日に勝ち越しを決めた時、「おかげさまで勝ち越しました」という連絡をもらいました。その際は、相撲内容の良さを話しました。“優勝”もチラついていましたが、その言葉は出さずに「連絡ありがとう。千秋楽が終わった時にもう一度うれしい連絡を待っているよ」と伝えました。
──朝霞市出身なのに入間市のクラブで稽古をするようになった経緯は？
西澤：彼はもともと、入間とはライバル関係にある朝霞のクラブに所属していました。ですが、ライバルの監督である私にも会う度にきちんと挨拶が出来る、性格の良い子だと思っていました。中学生で埼玉県の強化選手になった彼に、県のチームの監督をしていた私が入間に出稽古をしに来いと誘って、毎週土日に私の自宅に泊めて稽古をつけていました。
──当時はどんな子でしたか？
西澤：相撲の世界では小柄でしたが、「頑張り」という面では私の歴代の教え子の中でもトップクラスでした。もう一つの魅力は何といっても素直さ。アドバイスを素直に聞ける良い子でした。
中学３年生の時の大栄翔（右）と西澤さん
入間での稽古が大栄翔の基礎をつくった
大栄翔が中学３年の時の夏合宿で、ある出来事がありました。全国大会に向けた合宿にもかかわらず長髪だった大栄翔の頭を西澤さんがバリカンで丸めたそうです。その時の何とも言えない苦笑いの表情は、今でも西澤さんの脳裏に焼き付いています。そんなエピソードを伺っていたインタビューの途中、大栄翔から西澤さんに優勝報告の電話がありました。
「おかげさまで優勝することができました。本当にありがとうございました。今場所は自分の相撲をとることができて良かったです。中学校の時に入間で稽古をさせてもらったことが今の基礎となっているので、西澤監督には感謝しています」（大栄翔）
大栄翔から優勝報告の電話をうれしそうに受ける西澤さん
──今後の大栄翔にはどのように頑張ってほしいですか？
西澤：相撲は勝負の世界なので、自分の努力がそのまま結果に表れます。「ここで更なる上位を」と言うことは簡単ですが、まずは体を大事にしてほしい。ケガに気を付けて、勇人に悔いのないよう一日一日努力を続けてくれれば、結果はおのずとついてくると信じています。
「中学校時代に出稽古で教えただけなのに、いまだにこうして連絡をくれるのは本当にうれしい。とにかくかわいい子」と、西澤さんは終始笑顔でインタビューに答えてくれました。大栄翔のほかにも前頭筆頭の北勝富士（八角部屋）、幕下の塚原、栃神山（ともに春日野部屋）など、角界では西澤さんのもとから巣立った子どもたちがたくさん活躍しています。今後も埼玉県出身力士の活躍から目が離せません。
大栄翔関、おめでとうございます。
2017年、大栄翔が入間少年相撲クラブを訪問
【入間少年相撲クラブ】
：http://www.iruma-jr-sumo.com/
入会に関する相談は西澤総監督（090-3310-8995）まで。
西澤正夫（にしざわ・まさお）／入間少年相撲クラブ総監督
相撲の名門、明治大学付属中野中学・高校、明治大学相撲部出身。1998年に入間少年相撲クラブを創部し、厳しくも愛情あふれる指導を続けている。
尾内あゆみ（おない・あゆみ）
1985年生まれ、所沢市出身、飯能市在住。高校卒業後、入間ケーブルテレビグループに入社し、14年にわたって入間市で取材・番組制作に携わる。2017年より毛呂山町にあるゆずの里ケーブルテレビへ。制作編成課課長として番組を制作。長年の取材で得た知識をもとに埼玉の魅力を掘り下げる“埼玉コンシェルジュ”。
：あゆなびチャンネル（YouTube）
