神山典士・風の民の呟き「インタビュー 伝説の雀鬼 桜井章一さん」

トカイナカから掘り起こした物語、眠っていた鉱脈、やっと出会えた人、
長い間のラプソディ。そんな宝物を折々に綴ります。
トカイナカからの贈り物──。

伝説の雀鬼 桜井章一氏(78才)
人間は柔らかく生まれて固くなって死んでいく、心に一人少年をおけ、心優しきは万能なり

 伝説の雀鬼、桜井章一氏をご存じだろうか?

 かつて麻雀全盛の1970~80年代、政治家、実業家、資産家らの「代打ち」として並いる強豪を相手に20年間無敗を誇る。その偉業を綴った本「伝説の雀鬼・桜井章一伝」は幻冬舎、白夜書房等3社からも出ている!

 その凄味の証左だ。

 私が取材の最初の時(2008年)に「麻雀は全くできない(一度も打ったことがない!)です」と正直に告げると、「いいよ、麻雀なんか。打てば人間が堕落する」。

 それでいて町田の道場での取材、全国の雀鬼会のメンバーインタビュー、全国大会の取材、そしてパラオの海同行取材など、あらゆる便宜を図ってくださった。伊豆やパラオの海にも連れていってくださり一緒に海に潜らせていただいたことは、私にとっても一生の思い出だ。

 私にとって氏は、「雀鬼」というよりも「部族の酋長」であり、言葉を持つ「哲学者」であり、約80センチ四方のジャングルを生きる「野生人」でもある。

 本誌「トカイナカジャーナル」を創刊するときに最初に思った。

「桜井さんを表紙に!」。

 今回、その念願が叶った!

── 桜井さんの言葉に「人間は柔らかく生まれて固くなって死んでいく」があります。齢80歳を数年後に控えて、「死」に対して思うことはありますか?

「今年も海に行って(※桜井氏は若い頃から夏の約一カ月間海に暮らし、海に潜って魚と戯れるのを常としている)大波に水中でホワイトアウトして死にそうになったとき、ラッキーと思ったんだ。岩の下敷きになって動けなくて、こりゃ死ねるぞ~って。雨の中、津波みたいな波が来て視界は真っ白、片足が岩につかまっちゃって動けなかった。その日、橋本(雀鬼会の古参メンバー)が『会長は海で死んだら幸せですよね』と言ってたんだけれど、『そうだな、病院で死ぬのは嫌だよな』と思っていたから、意外と冷静だった」

── 私は桜井さんがパラオの海で、素潜り素手でウミガメを二度捕まえたのを目撃しています。海には生まれ故郷のような感覚があるのですか?

「海へはいると他にはない世界を感じるというか、許してもらっている感覚があるな。遊んでもらっているというか。嵐の時も3度目の大きな波が来た時に大きな岩がスッと動いてくれて脱出できた。水中で真っ白なところと真っ黒いところがあって、黒い方に向かって泳いだら水面にパッと出て、向こうから「会長だ~」って声がして助かったんだ」

── もう一つ「心に一人少年をおけ」も大好きな言葉です。

「俺はそのまんまだからね。大人の世界に入りたくねぇ。きたねぇモンを体に塗り付けていくようなもんだから。極力子どもでいたい。だからといって大人にはなめられない。この前入院したときに、携帯電話を初めて持たされたんだよ。でも使い方がわからない。使いたくない。一回も外に持って行ってない。それって携帯じゃないよな(笑)。俺が少年だった時代はなかった『便利』なもんだから。それはいらないんだ」(続)

続きは以下よりお読みください。

note:TheBazaarExpress69、伝承する「無敗伝説」~桜井章一と雀鬼会編

執筆者プロフィール
神山典士(こうやま・のりお)

ノンフィクション作家、埼玉トカイナカ構想代表。1960年生まれ、埼玉県出身。入間市立豊岡小・豊岡中、埼玉県立川越高校卒業。ときがわ町トカイナカハウスでの生活を満喫中。美味しいうどんや野菜、懐かしき昭和テイストの温泉、移住者たちとの交流、あとは地元の皆さんとの交流を画策しています。著書に『成功する里山ビジネス ダウンシフトという選択』(角川新書)など多数。また、今秋に『トカイナカ暮らしの流儀』(仮題)を上梓予定。

http://norio-kohyama.com/

神山典士
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