料理研究家・川上文代が埼玉の食材を使った簡単レシピをご紹介します!
牧場ごとに違う“おいしさ”へのこだわり
武州和牛は、「埼玉県産の和牛を広めたい」との思いで、2001(平成13)年より黒毛和牛を導入し、03年に商標登録されて誕生した和牛ブランドです。「武州」とは、埼玉県の古い呼び名の一つで、その名を背負うにふさわしい、黒毛和牛が持つ上質な旨みがぎゅっとつまった、全国に誇れる埼玉のブランド農産物です。
牛の産地は、生まれた場所ではなく、肥育された期間が最も長い場所と決められています。武州和牛は全国より良質な黒毛和牛を仕入れ、「埼玉県武州和牛組合」の組合員である飼育農家の手によって、28カ月以上、埼玉の自然に恵まれた環境の中でのびのびと育てられます。
熟練した飼育農家が快適な飼育環境を図り、十分な粗飼料と武州和牛オリジナルの共通の濃厚飼料、更には各農家が独自の工夫をプラスして飼育に力を注いでいます。深谷を中心とした埼玉北西部に20 の農家があり、年間出荷頭数は約3500頭です。
飲食店で食したり、実際に調理してみて驚いたのが、同じ武州和牛でも、牧場によって肉質や脂の風味が違うこと。組合の規定を守りつつも、各農家が独自の育て方をしているからです。武州和牛の取り扱い店舗は「埼玉農産物ポータルサイトSAITAMAわっしょい!」 に掲載されています。武州和牛を味わえるお店は約20軒あるので、食べ歩きをするのも楽しいかと思います。
基本的には、柔らかい鮮紅色の赤肉の中にきめ細かなサシが入った霜降り牛肉ですが、口に含んだ瞬間は濃厚で、噛めば噛むほど風味を伴うコクの深さ。だけれども後味はさっぱりとしているからいくらでも食べられて、牛肉本来のおいしさを教えてくれます。
購入した武州和牛は、部位によって味わいが違います。ランプやロース肉はステーキに、もも肉は薄くスライスして炒め物などにするのがお薦め。ロース肉の脂の部分は、炒め物やチャーハンなどを作る際に使ったり、カリッと揚げ焼きして、サラダなどのトッピングにしたりといろいろ活用できます。
上から武州和牛のイチボ、ロース、ももブロック
武州和牛と埼玉特産品のねぎの相性が抜群な焼きそば
まずはステーキにして味比べをしました。味付けは塩・胡椒、ワサビ醤油、柚子胡椒などシンプルに。埼玉県の特産品であるねぎをたっぷり入れた焼きそばも、お肉の旨味がじんわり素材に広がって美味しかったです。
一番お薦めの食べ方は「武州和牛ステーキのねぎライス」です。埼玉県が産出額で全国2位を誇るかぶとねぎ、「金笛醤油」(笛木醤油/川島町、第1回参照)を使った一品、ぜひお作りください。
武州和牛ステーキのねぎライス
■材料(2人分)
- 武州和牛肉(ロースやランプなど) 200g
- ご飯 300g
- ねぎの粗みじん切り 大さじ2
- にんにくのみじん切り 小さじ1
- かぶ 1個
- 醤油 小さじ2
- 塩、胡椒、柚子胡椒、バター 各適量
■作り方
- ① 武州和牛肉の脂を外して5ミリ角に切り、肉は筋切りし、塩、胡椒する。かぶは、茎付きで4枚に切る。
- ② フライパンにバターを熱して、肉とかぶをこんがり焼いて取り出し、40~60℃の温かいところに置いておく。
- ③ ②のフライパンに、武州和牛の脂を入れて熱し、溶けてきたらにんにくとねぎを入れて、揚げ焼きするように炒める。
- ④ 全体に色付いてきたら、ご飯、塩、胡椒を入れてパラパラに炒め、最後に鍋肌から醤油を加えて、大きく混ぜる。
- ⑤ 器に④のねぎライスを盛り、切り分けた武州和牛とかぶを並べ、柚子胡椒を添える。
川上文代(かわかみ・ふみよ)
料理研究家。辻調理師専門学校で12年間勤務後、デリス・ド・キュイエール川上文代料理教室主宰。新刊『フライパンで! 時短和食』(主婦の友社)、『新装版 和食の教科書』『新版 イチバン親切な料理の教科書』(ともに新星出版社)をはじめ、著書多数。
:https://www.delice-dc.com